投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

書評『評伝 戸田城聖(上)』――教育界・実業界の風雲児

ライター
本房 歩

淵源としての創価教育

 牧口常三郎、戸田城聖、池田大作という創価学会の三代の指導者は、今や世界宗教として広がる創価学会の指導者であると同時に、やはり世界に共感を広げゆく「創価教育」の指導者でもある。
 創価学会は牧口常三郎の「創価教育」を研究実践する「創価教育学会」という教育者の団体から出発した。
 一般的には、特定の宗教や宗派の信仰が先にあって、その教理を土台に教育機関がつくられるケースがほとんどだろう。教団の聖職者を養成する学校から発展した大学も多い。
 ところが創価学会の場合は、ある意味で先に「創価教育」という、あくまでも普遍的な特定の信仰に縛られない教育理念の実践があって、そこから日蓮仏法にもとづく宗教運動へと収斂(しゅうれん)したといえるのかもしれない。
 牧口常三郎も戸田城聖も、卓越した教育者であった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第84回 仕事が好きだといえるようになりたい

作家
村上政彦

 僕は高校を中退している。そのあとは、いまでいうニートを経て、アルバイト暮らしに入った。それから紆余曲折があって大学へ入り、業界誌の記者や学習塾の経営などをやって、作家デビューを果たした。
 だから、働くということについて、いろいろ考えることが、たぶん人より多かったとおもう。ニートをやめて、アルバイト暮らしに入ったとき、それはさまざまな職種を体験した。
 いちばん大変だったのは、肉体労働で、3日でやめた。体が悲鳴を上げて、高熱を発し、働けなくなったのだ。楽しかったのは、某ファーストフードチェーンのスタッフとして、外で子どもたちに風船を配っていたことだった。自分が天使になった気がしたものだ。
 作家デビューを果たしたのが29歳のときで、それ以降は小説家としての肩書きから発生する仕事以外はやったことがない。幸運だとおもう。あれから約30年――働くことについて考えてみた。 続きを読む

『年金不安の正体』を読む――扇動した政治家たちの罪

ライター
松田 明

「まず謝れよ国民に」

 2019年7月の参議院選挙で、野党が〝争点〟だとしたのが「消費税」と並んで「年金不安」だった。
 金融審議会「市場ワーキング・グループ」が提出した報告書に、

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。

と記載されていたことを、立憲民主党や国民民主党、日本共産党など野党がいっせいに問題視したのだ。 続きを読む

書評『牧師が語る仏法の師』――宗教間対話の記録

ライター
本房 歩

全米で評価された書籍

 本書『牧師が語る仏法の師』は2つの意味で、読者にとって有益なものをもたらすだろう。
 第1は、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアが真にめざしていたものは何だったのかということへの、洞察と理解である。
 第2は、創価学会の世界宗教化とは、どのようなプロセスと展開を経ていくのかということへの想像力である。
 本書の原題は『A Baptist Preacher’s Buddhist Teacher』(バプティスト牧師の仏法の師匠)。
 2018年11月に米国のミドルウェイ・プレスから出版された同書は、キリスト教のもっともすぐれた書籍を選出するイルミネーション・アワードの「回想録」部門で、2019年の金賞に輝いた(「聖教ニュース」2019年4月22日より)。
 著者のローレンス・E・カーターは、キリスト教バプティスト派の牧師であり、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの母校モアハウス大学にある「キング国際チャペル」の所長である。 続きを読む

SGI結成から45周年――「世界市民の連帯」の原点

ライター
青山樹人

グアムの「小さな会議」

 SGI(創価学会インタナショナル)が結成されたのは、1975年1月26日のことである。
 結成の地となったのは太平洋に浮かぶグアム島。51ヵ国の代表が集っての第1回世界平和会議においてであった。
 グアム島は太平洋戦争の激戦地でもあり、米兵およそ1400人、日本兵およそ2万人が命を落としている。その小さな島から、池田大作・創価学会第3代会長(当時)は世界平和への新たな「民衆による潮流」を起こそうとしていた。
 代表たちが名前と国籍を記した記念の署名簿。池田会長は、自らの国籍欄に「世界」と記した。 続きを読む