野党の国会放棄に批判高まる――政府を追及せず官僚叩きに終始

ライター
松田 明

「国会は審議するのが筋」

 野党の審議拒否による国会の空転という異常事態が続いている。
 重要法案の審議も山積み。朝鮮半島など日本を取り巻く世界情勢も、文字どおり歴史的な局面にある。
 だが、日本の国会では南北首脳会談の前日の4月26日も、外交を主なテーマとした衆参の予算委員会を立憲民主党など6党がボイコットした。
 日本経済新聞は4月24日で「不祥事続出でも国会は審議するのが筋だ」と題する社説を掲載。

 一連の不祥事は行政への信頼を揺るがしており、真相解明や責任追及は当然だ。だからといってそれが法案の審議などをすべて欠席し国会を長く空転させる理由にはなり得ない。(日本経済新聞/4月24日)

と野党の姿勢を批判し、世界情勢の激動の中で内向きの議論に終始すべきでないと警鐘を鳴らした。

「国民の理解は得られないだろう」

 読売新聞も26日の社説で、

 論戦を通じて、様々な政策の問題点などを指摘し、改善を促す。政府が担うことの出来ない分野で議員立法の実現を図る。今の野党は、こうした本来果たすべき役割を見失っている。読売新聞/4月26日)

と野党の国会放棄を批判。
 さらに、どちらかと言えば野党に理解を示す論調の多かった毎日新聞も、社説で野党の姿勢に疑義を呈した。

 麻生氏が辞任しないのを審議拒否の理由にする野党の対応も疑問だ。野党だけの合同ヒアリングという非公式な場に官僚を呼んでただすのもいいが、その前に国会で政権の責任を追及すべきだ。(毎日新聞/4月26日)

 重要法案の審議を遅らせる日程闘争が目的であれば、国民の理解は得られないであろう。(同)

55年体制のままの野党

 疑問の声は〝身内〟からも上がっている。
 かつて民主党の参議院議員を2期務め、鳩山内閣の官房副長官、参議院内閣委員長、民主党筆頭副幹事長などを歴任した松井孝治・慶應義塾大学総合政策学部教授も、ツイッターで連日、野党の戦術に苦言を呈した。

 結局、審議拒否→重要法案の会期末への先送り→廃案ないし強行採決に追い込むという55年体制の日程政治の定石を踏む現状。平成も終わろうとするこの時期、昭和の国対政治に代わる国会改革を志向した方々が野党にもいたと思うのだが音無し。通年国会などゲームのルール変えなくては言論の府が泣きます。(4月20日のツイート)

 安倍内閣の問題について、野党は、国会で「これでもかというぐらい追及を」するべき時ではないのか?
 それを欠席して、あえて国会の別会議室で答弁権限のない官僚相手に責め立てる姿勢に、正直言って、55年体制の社会党への幻滅感以上の幻滅を感じます。
 野党、しっかりしてくれ!(4月26日のツイート)

 安倍内閣を追及すると叫びながら、安倍首相や麻生財務相が席についている国会の委員会には出ない。
 同じ時間、別の部屋に「答弁権限のない官僚」を呼びつけ、テレビカメラの前で〝官僚を責め立てる〟という何の実りもないパフォーマンスに明け暮れているのである。
 とくに看過できないのは、たとえば4月20日の厚生労働委員会などのように、野党が法案を提出し、質問通告までしておきながら、国会を欠席していることだ。
 国会の1日あたりの運営に費やされる税金は3億円とも4億円とも試算されている。
 国会で政府を追及することもせず、委員会の時間だけを空費させ、官僚叩きのパフォーマンスだけをテレビカメラの前で繰り返す。
 内閣支持率がいくら下がっても野党の支持率が伸びない理由を、よくよく考えてもらいたい。

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