つげ義春が芸術院の会員になった。本人は年金がもらえるから、とお気楽なコメントをしているが、漫画家としては初となる。だから、クリエイターとして偉くなったのか、村上も権威には弱いのだな、とはおもわないでほしい。
権威が漫画に頭を下げたのだ。どうぞ、会員になってください、と頼んだのだ。漫画少年として、子供時代を生きてきた身の上としては、なかなか痛快なものである。僕が漫画少年だったころ、漫画は低俗なものとされてきた。親は、漫画ばっかり読んで、と叱った。
もちろん芸術の世界でも、漫画を芸術的な作品と見ることはなかった。子供だましの手すさびぐらいにしかとらえられていなかったのだ。評価などおこがましい、論じるにも値しない――そんな、あつかいだった。
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潮目が変わったのは80年代の後半あたりからか。一部の先見の明のある人々が、漫画こそ世界に誇れる日本のすぐれた文化だ、という見方をするようになった。漫画評論家を名乗る人物たちもあらわれた。 続きを読む
