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沖縄伝統空手のいま 道場拝見 第2回 沖縄空手の名門道場 究道館(小林流)〈下〉

ジャーナリスト
柳原滋雄

もう一つの究道館道場

 土曜日の午前、タイミングよく那覇市役所そばの泉崎道場の稽古を取材することができた。比嘉稔館長夫妻が住むビルの3階が道場スペース兼夫人の琉球舞踊の稽古場となっている。ここには茶帯の中学生も多く参加していた。この日もイギリスから来訪中の8人が稽古にやってきた。
 壺屋の本部道場よりやや狭い。3面に鏡が張られており、道場生が1人1人に「おはようございます」と頭を下げてあいさつする光景が見られた。
「整列お願いします」
 昨日と同じく比嘉康雄7段の掛け声で稽古が始まる。前日、比嘉稔館長はやや体調を崩し、パイプ椅子に座りながらの指導だった。
 最初に準備体操を行う。拳立て伏せ(拳を握ったままでの腕立て伏せ)も行った。
「スリーライン(3列で)」
 基本稽古が始まる。稔館長はやおら立ち上がり、五寸突きの説明を始める。五寸突きは大きな動作ではなく、極めて小さな動作で突きを放つが、見かけよりずっと大きな威力をもたらす。
「ティージクン」
「腰で動かす」
 帰国が迫っているイギリスの門下たちに要諦を教えようとする館長の姿に映った。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま 道場拝見 第1回 沖縄空手の名門道場 究道館(小林流)〈上〉

ジャーナリスト
柳原滋雄

現存する戦後最古の道場

究道館の現在の入り口。いまも「比嘉佑直」の名前を降ろしていない

 戦後まもない食うや食わずの日々に、沖縄空手の復興にもしばらく時間がかかった。戦後10年間で那覇市にできた大型道場は長嶺空手道場(久茂地)を嚆矢とし、それにつづく比嘉佑直(ひが・ゆうちょく 1910-1994)の究道館(きゅうどうかん)があった。以来、70年。長嶺道場はすでに取り壊されたが、究道館はいまも同じ場所に残る。その意味では沖縄に現存する最も古い道場のひとつといえるだろう。
 1972年に建て替えられた現在の道場は鉄筋コンクリート2階建て。1階部分の82平米が道場スペースだ。現在、比嘉佑直の子息・比嘉佑治が所有・管理する。入り口をくぐると正面右側に道場に上がるサッシ窓があり、左側に巻藁が4本設置されている。 続きを読む