三代会長が開いた世界宗教への道②――嵐のなかで世界への対話を開始

ライター
青山樹人

解散総選挙に合わせた出版

 1969年の暮れには、第32回衆議院選挙が予定されていた。
 8月になると、当時、保守派の論客として名を売っていた藤原弘達(ふじわら・ひろたつ)が『創価学会を斬る』と題する本を出版するという予告ポスターが大々的に出た。
 藤原の本は、大上段に構えたタイトルとは裏腹に、歪んだ憶測や風評を並べ、学会員とりわけ婦人部を侮蔑するような内容に満ちたものであった。創価学会本部に対する一片の取材もおこなわないまま、部下に口述したものを出版社にまとめさせるという安易なもの。評論家の大宅壮一は、
〈きわめてぞんざいな方法である。これではキワモノ出版といわざるを得ない。〉(『現代』70年3月号)と、痛烈に非難している。 続きを読む

芥川賞を読む 第17回 『家族シネマ』柳美里

文筆家
水上修一

映画という虚構の中で、家族の実像を浮かび上がらせた

柳美里(ゆうみり)著/116回芥川賞受賞作(1996年下半期)

舞台を観ているような展開

 第116回の芥川賞は2作品が受賞。柳美里の「家族シネマ」と辻仁成の「海峡の光」だ。いつも手厳しい石原慎太郎もこう述べている。

箸にも棒にもかからぬような候補作とつき合わされる不幸をかこつこともままあるが、今回はどの作品も一応は読ませてくれた

 今回はまず柳美里の「家族シネマ」を取り上げる。受賞時は28歳。27歳の時にすでに「フルハウス」と「もやし」でそれぞれ113回と114回の芥川賞候補となっている。また、「フルハウス」は第24回泉鏡花文学賞と第18回野間文芸新人賞を受賞していて、その実力は折り紙付きだった。 続きを読む

「非核三原則」と公明党――「核共有」議論をけん制

ライター
松田 明

共産など「オール沖縄」の4連敗

 沖縄市長選挙が4月24日に投開票され、自民党と公明党が推薦する現職の桑江朝千夫候補が、玉城デニー知事らオール沖縄が立てた新人で前市議の森山政和候補(立民、共産、社民などが推薦)を1万票の大差で破って3期目の当選を果たした。

 同市は那覇市に次ぐ県内第2の都市。自公側は1月以降に行われた4市長選を全て制し、9月投開票の知事選に弾みをつけた。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する「オール沖縄」勢力は4連敗で、玉城氏にとって大きな痛手となった。(「読売新聞オンライン」4月25日)

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連載エッセー「本の楽園」 第129回 読まされてしまった物語

作家
村上政彦

『弱さの思想』、『雑の思想』に続く『あいだの思想』を取り上げるつもりが、まんまと読まされてしまった本があるので、先にそれを取り上げたい。
 僕は野球少年だった。小学校に入る前後は、少し空き地があると、三角ベースで遊んだ。これは、ホーム、一塁、二塁だけでやる野球で、ゴムボールを使い、手で打つ。選手はひとつのチームで数人だから、すぐゲームが成立する。陽が暮れてボールが見えなくなるまで、夢中で走り回っていたものだ。
 小学校の高学年になると、誰もがマイ・バット、マイ・グローブを持っていた。特にチームをつくるわけではないのだが、いつのまにか選手が集まって、野球が始まった。王・長嶋が憧れのスターで、僕の周りはみな、巨人のファンだった。 続きを読む

三代会長が開いた世界宗教への道①――日蓮仏法の精神を受け継ぐ

ライター
青山樹人

100年前に「世界市民」を示す

 20世紀が開幕する1901年に北海道から上京した牧口常三郎先生は、苦心の末、その2年後の10月に『人生地理学』を出版する。時に32歳だった。
 この著作の中で牧口先生は、一人ひとりの人間が「一郷民」「一国民」「一世界民」それぞれの自覚に立つべきことを促している。
 あくまでもひとりの生活者として、まず郷土に目を凝らし、そこから国内や海外の出来事に視野と想像力を広げていく。他国民をも自分と有縁の存在だと認識していくことで、自分自身がこの地球上で共に生きる「一世界民」だと自覚できる。
 日露戦争の開戦直前、日本にも世界にも帝国主義の嵐が吹き荒れていた渦中、牧口先生はローカルとグローバルの両方の視点に立った「世界市民」の概念を早くも提唱していた。 続きを読む