何かをしようとしても、なんか怠い、気分が乗らない――かといって、重い病をわずらっているわけでもない。いま、そんな人は多いのではないだろうか。
僕は小説を書くことでたつきを得ている。ベストセラー作家ではないので、小説だけで暮らしは立たない。小説を書く営みを核にして、その周りに広がる細々した仕事をするのだ。このコラムも、そのうちのひとつだ。
文章を書くのは、楽しい、とはいえない。どちらかといえば、苦行寄りである。いつも仕事をするときには、新聞を読んだり、日記を書いたり、なんらかの準備運動をして、弾みをつけないと、とりかかれない。
しかし〆切があって、急いでいるときは、まず、仕事部屋へ重い足を運ぶ。気合を入れて、机の前に坐る。覚悟を決めて、パソコンの電源をオンにする。そして、えいやーっと一行目を書く。すると、だんだんエンジンが回転を始める。
仕事って、たいていそんなものでしょう?
でも、それができなくなった物書きは、干上がってしまう。『元気じゃないけど、悪くない』の著者は、そうなってしまった。 続きを読む





