「日中」新時代の開幕(上)——競争から協調へ

ライター
松田 明

7年ぶりの単独公式訪問

 10月27日、中国の主要紙はいずれも一面トップに大きなカラー刷りで、日中の国旗を背景に安倍首相と習近平国家主席が笑顔で握手する写真を掲載した。
 見出しはそれぞれ、「中日両国が多くの点で合意した」「両国関係を促進して新たな発展を」などと報じている。
 25日から2日間にわたった安倍首相の訪中は、単独での公式訪問としてはじつに7年ぶりとなるものだった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第19回 しょうりん流③ 知花朝信の開いた小林流(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

知花の直弟子の流れ

 1969年、知花朝信(ちばな・ちょうしん 1885-1969)が他界した後、沖縄小林流空手道協会の2代目会長には宮平勝哉(みやひら・かつや 1918-2010)が就任した。戦前からの古い弟子で、満州の日本語学校で教員を務めたあと、戦後は那覇市役所に勤務した。
 20歳で宮平の弟子となった宮城驍(みやぎ・たけし 1935-)現会長は、宮平のことを「がっちりした体格で、柔道の有段者、沖縄相撲も強かった。人格者だった」と振り返る。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第60回 横尾忠則の世界①

作家
村上政彦

横尾忠則のことはとても個性的な絵を描くイラストレーターとして知っていた。でも、それだけだった。特にそれ以上のことを知ろうとも思わなかった。彼のことが気になり始めたのは画家に転向してからだ。
確か、マルセル・デュシャンの影響で、死んでいた絵画がニュー・ペインティングと称されて、またアートの世界で復活を遂げたころだったか。イラストレーターとして成功していた彼が、絵画という未知の領域に乗り出したことで、なぜか? という思いが湧いた。
でも、何となく、それも素通りして、横尾の作品や本を手にすることはなかった。去年あたりから、ぽつぽつ彼の本を読むようになった。これがおもしろかった。 続きを読む

臨終をめぐる家族の物語——インド映画『ガンジスに還る』

フリーライター
藤澤 正

ボリウッドといえば「歌」や「踊り」?

 父親の臨終をめぐる家族の物語『ガンジスに還る』(英題:HOTEL SALVATION/2016年/インド)が、まもなく日本でも公開される。
「インド映画」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「歌」や「踊り」が登場するお決まりの〝ボリウッド〟を連想する人も多いのではないか。 続きを読む

なぜ、これほどまでに強いのか?――書評『創価学会』

ライター
本房 歩

世界最大の仏教運動

 20世紀を代表する歴史家アーノルド・J・トインビーが、英語版『人間革命』にわざわざ序文を寄せ、

 創価学会はすでに世界的出来事である。

と書いたのは1971年のことだ。
 当時、創価学会は前年に750万世帯に達したばかりであり、いくつかの国に法人化された組織があったとはいえ、まだSGI(創価学会インタナショナル)も結成されておらず、公明党も結党して10年にも満たない野党だった。
 あれから半世紀。今日、創価学会の存在感と影響力は、往時とは比較にならない大きさになっている。 続きを読む