若者・女性の困窮を救え――都議選のゆくえが重要

ライター
松田 明

突破口ひらいた豊島区

 コロナ禍のなかで、「若者・女性の貧困」「社会的孤立」といった課題が一層深刻化している。
 飲食店の休業や閉店などでアルバイト先を失った学生。企業の業績悪化で解雇された非正規労働者。ステイホームが長引くなかでのDV(配偶者からの暴力)、児童虐待、うつや引きこもりの増加。
 警察庁のまとめでは、5月に自殺した人の数は1745人。前年の同じ月と比べて1割近く増加している。自殺者が前年同月を上回る状況は、2020年7月以降、11カ月連続。とくに男性の増加率に比べて女性の増加率が顕著に高い。
 また東京都が2018年に公表した調査結果によると、住まいがなくネットカフェやマンガ喫茶で寝泊まりしている人は約4000人。これは「コロナ前」の「東京都のみ」の数字だ。
 こうした業態への休業要請で、行き場を失った人は相当数にのぼっているだろう。
 経済的な理由で生理用品が十分に買えない「生理の貧困」は、公明党の佐々木さやか参議院議員が本年3月4日の予算委員会ではじめて取り上げて注目された。
 全閣僚がその現実を認識したこともあり、政府は異例のスピードで対応。19日後の3月23日には、女性支援の費用を盛り込んだ支援策を閣議決定。
 ここから、国会議員・都道府県議員・区市町村議員が緊密に連携する公明党の強みが発揮される。
 すでに3月9日には、公明党豊島総支部(総支部長=長橋けい一都議)が豊島区に対し、「防災備蓄品の生理用品を必要な人に配布すべき」と要請。豊島区は全国に先がけて3月15日を皮切りに、備蓄していた生理用品の無償配布を開始した。
 また都議会公明党の伊藤こういち議員(品川区)の申し入れを受けた品川区では、4月から区立小中学校の女子トイレに無償の生理用品を配布した。

政府を動かした公明党の提言

「もやい」の支援活動に足を運び汗を流す長橋けい一議員(写真中央)

 公明党では2月に「社会的孤立防止対策本部」を設置。全国で実施した1000件超の聞き取りをもとに、孤立防止対策に関する提言を5月21日、菅首相に提出した。
 社会的孤立は、①個人ではなく社会の問題、②外から見えにくい、③対策には地域の支え合いが必要、との基本認識に立ったもの。最優先の取り組みとして、高齢、障がい、生活困窮など、属性や世代を問わずすべての自治体で包括支援をおこなうよう提言した。
 この公明党の提言を受けて、政府は「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」制度を新設。6月14日には厚労省がフリーダイヤルの相談センターを開設し、この7月から申請を受けつける。
 単身世帯で月6万円、2人世帯で月8万円、3人以上世帯で月10万円。7月以降に最大3カ月支給。申請期限は8月末までの予定。
 6月2日の東京都議会本会議では、都議会公明党の高倉良生議員(中野区)が、子供食堂の配食や宅食サービスへの支援の強化を要請した。
 東京都福祉保健局長からは、

 御会派の要望も踏まえ、今回、緊急対応策として、包括補助の中で、配食、宅食への補助を年12万円から60万円に見直し、補助率10分の10で支援いたします。
 今後も、区市町村と連携して、子供と家庭を必要な支援につなげる子供食堂の取り組みを支援してまいります。(令和三年「東京都議会会議録」第九号)

との答弁があった。

緊急性の高さの表れ

 新型コロナウイルス対策に関連して、住まいを失ったり、収入が減ってしまった人たちを支援するための民間の取り組みも加速している。
 認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」は、「新宿ごはんプラス」と共同で、従来は月2回だった相談会を昨年4月以降、毎週土曜日に開催している。
 場所は東京都庁前の高架下。その際、数量に限りはあるが毎回、食料の配布もおこなってきた。
「もやい」の大西連・理事長によると、訪れる人の数は増え続けており、5月以降は毎週300人以上になるという。

 コロナ前は中高年男性が全体的に多かったのですが、コロナになって以降、とくに最近は10代や20代前半の若い男性や女性が増えてきました。それまでも個別の相談会などに訪れる若い世代はいましたが、街頭での食料配布という心理的ハードルが高いものにもかかわらず若い人が増えている。これは緊急性の高さの表れだと思います。(大西理事長)

「貧困問題を自身のテーマに」

 5月には、都議会公明党の長橋けい一議員も、実際にこの相談会の現場に足を運んだ。

先週、新宿都庁下で食料配布と生活相談に取り組まれている@npomoyaiの大西連理事長@ohnishirenにお会いし、コロナの影響により困窮している方の現状を教えていただきました。驚くことに、若者や女性も多くおります。

生活困窮者の視線に立って、いのちと暮らしを守る街作りに奔走して参ります!
(長橋都議の5月25日のツイート)

 WEB第三文明の取材に対し、長橋けい一都議は次のように語った。

 もやいの活動を拝察し、頭が下がる思いです。心から敬意を表します。生活困窮者のなかには、若者も多く、コロナの影響を強く感じました。
 何かお手伝いできないかとの思いを一層強くしました。引き続き、「貧困問題」は自身のテーマとして取り組んでいきたい。

公明党だけができること

「もやい」大西連理事長(中央右)と長橋けい一議員

 とりわけコロナ禍の東京都政にあって、多くの課題は予算など国との連携が必要であり、同時に区市町村の地域に密着した〝目〟と〝耳〟と〝手〟が求められる。
 都議会第一党の都民ファーストの会は国会議員ゼロ。区市町村にも議員は少ない。実績づくりを焦るあまり、都知事に敵対する共産党と組んで意味のない条例案を出したり、前回選挙からの4年間で8人が離党するなど、党内ガバナンスが混乱している。
 都議会のなかで、国と連携し、知事と合意形成でき、同時に区市町村の地域に根を張っている会派は、じつは公明党しかないのだ。

 政治の役割について、「もやい」の大西理事長は次のように語っている。

 弱っている人への支援の仕組みのぜい弱さが、コロナで見えてきたわけです。困っている人々のために、どういう世の中にしていくのか。これが政治の仕事だと思います。政治は、弱い立場の人に真正面から向き合わないといけない。
 そのためにも、政治家が現場に足を運び、現に苦しんでいる人と直接コミュニケーションをとることです。何に困っているのか、人々の状況を生で見聞きし、からだ全体で受け止めてほしい。そのなかから出てくる提案というものは、おのずと違ってくると思うからです。

 私たちはコロナ禍を乗り越えて、今まで以上に誰もが希望の持てる社会をつくらなければならない。現場主義に徹し、小さな声を拾い、合意形成能力をもち、政策実現力のある政治家と政党に期待したい。

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