坂口恭平という人物を意識したのは、2011年の福島原発事故があって、何人かの文学者が集まった席だった。当時、彼が出版した『独立国家のつくり方』という新書を話題にした編集者がいて、あ、それは僕も知ってる、とおもった。ただ、読んではいなかった。
後日、読んでみたら、著者の問題の設定は、新しい社会をどのように構築するか、というより、僕らがどのように生き方を変えてゆくか、に重心がある、と感じた。社会を変える思想や試みは珍しくないけれど、そのためには、まず、個人の生き方を変えねばならないという。
当然のことを、社会を変えるための実践として説いているところに関心を持った。同じことを考えていたからだ。人間が変わらなければ、社会は変わらない。そのためには、どうすればいいのか?
坂口は、あなた自身が変わることですよ、と呼びかけているようにおもえた。僕も同じだった。まず、僕が変わらなければ、社会は変わらない、と考えていた。かなり齢はちがうけれど、坂口は仲間だとおもった。 続きを読む
