コラム」カテゴリーアーカイブ

書評『世界の名画との語らい』――好評連載がオールカラーで書籍化

ライター
本房 歩

聖教新聞外信部の挑戦

 新聞のクオリティーは、その「文化欄」を見れば分かるとしばしば言われる。
 本書は『聖教新聞』12面に2018年3月から現在も連載されている「世界の名画との語らい」をまとめたもの。
 言うまでもなく『聖教新聞』は創価学会の機関紙であるが、日本では読売、朝日につぐ発行部数を有する、大きな影響力を持った日刊の全国紙でもある。
 ただ、一般的に新聞の美術記事は学芸部か文化部が担当するのに対し、この「世界の名画との語らい」がユニークなのは、外信部が担っていることだ。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流 第42回 特別編① 「空手は近世に形成された沖縄固有の武術」(沖縄空手アカデミー・田名真之館長の講演から)

ジャーナリスト
柳原滋雄

 沖縄空手の学術研究を推進する沖縄県主催の1回目の「沖縄空手アカデミー」が開催されたのは昨年10月。全6回の予定で、すでに3回分が終了している。
 1回目のテーマとなったのは「近世琉球の空手関連史料」で、空手の発祥に関わる史料がほとんど残されていない近世時代(=日本の江戸時代に相当)の史料について、沖縄県立博物館・美術館の田名真之(だな・まさゆき 1950-)館長が解説する興味深い内容となった。今回はその概要を紹介する。 続きを読む

書評『希望の源泉 池田思想②』——「反体制」への誘惑を退ける

ライター
本房 歩

「哲学の大空位時代」

 池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長の『法華経の智慧』の連載が、創価学会の機関誌『大白蓮華』ではじまったのは、1995年2月号からである。
 折しも、第二次世界大戦の終結から50年。
 自民党の長期単独政権は93年夏に終焉しており、下野した当時の自民党は、日本社会党の党首を首班に担ぐという奇策で政権復帰を果たしていた。
 そうしたなかで、1月17日に近畿地方で大都市直下型の阪神・淡路大震災が発生。3月にはオウム真理教によって同時多発的に東京の中枢で猛毒サリンが撒かれる地下鉄サリン事件が起きた。さらに警察庁長官が何者かに狙撃され重傷を負った。
 世界を見渡せば、東西冷戦が終わったことで〝重石〟が外れ、復古主義的なナショナリズムが強まり、一部の宗教宗派もまた偏狭な民族主義に侵食されつつあった。
 日本国内も世界も、それまでの安定や秩序が大きく崩れ、強い不安感と危機意識に覆われていたのである。 続きを読む

公明党の手腕が光った1年――誰も置き去りにしない社会へ

ライター
松田 明

人権侵害の是正を求める

 2019年12月23日、ミャンマーを訪問中の山口那津男・公明党代表は、アウン・サン・スー・チー国家顧問の私邸に招かれて会談した。両者は前年10月にも東京で会談しており、3回目の会談となる。

 山口氏は、隣国のバングラデシュに避難している、少数派のイスラム教徒・ロヒンギャの人たちをめぐって、「人権侵害が行われているという疑惑について適切な措置をとるとともに、帰還に向けた環境整備に努めることが重要だ」と指摘しました。
 これに対し、スー・チー氏は、避難民への日本の支援に謝意を示したということです。(「NHK NEWS WEB」12月24日

 少数民族ロヒンギャへの弾圧をめぐり、EU(欧州連合)はミャンマーへの制裁措置を2020年4月まで延長している。一方、中国は「一帯一路」の要衝として、同国への経済支援を積極的におこなっている。
 こうしたなかで、日本政府は経済支援というコミットメントを維持し、ミャンマーの孤立化を防ぎながら民主化を強く促す戦略をとってきた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第83回 アートとしてのアナスイ

作家
村上政彦

 アナスイのコレクションを眺めていると、なぜか、創作の意欲を刺激される。あるとき、デパートですばらしいワンピースを見て、思わず「欲しい!」とおもった。僕には、女装癖はない。だから、純粋にアートの作品として、欲しいとおもったのだ。
 しかし、隣にいた妻は、私には似合わないわ、という。いや、君のためじゃなく、僕のために買うんだ。彼女の頭の上に、大きな「?」が浮かんでいた。だから、これは画を買うのと同じなんだ。僕は、作品として、このワンピースが欲しいんだ。
 妻は、値札を見て、無理、と一言いった。いや、画よりも安い。でも、画じゃないもの。これ、大きな額縁に入れて壁に飾って置いたら、仕事が捗る。妻は首を振りながら売り場を去った。 続きを読む