コラム」カテゴリーアーカイブ

新型コロナウイルス特集⑤――本領を発揮する公明党

ライター
松田 明

他の政党にはない能力

 公明党が「災害対策」に見せる能力について、地方自治体の首長らからも率直な評価や称賛を受けてきたことを以前に紹介した(前掲記事「『災害対策』に強い公明党――自治体首長らの率直な評価」)
 近年でも2016年に2度の震度7を経験した熊本県の蒲島郁夫知事は、

 熊本地震のときに、もしも自民党の単独政権だったとしたら、私は〝自分のことは自分でやれ〟という新自由主義的な対応に傾く恐れがあったと思っています。公明党は伝統的に福祉や平和、弱者への配慮など、社民主義的な要素を持っておられます。熊本地震で熊本県は、負担の最小化と被災地への最大限の配慮、そして創造的復興という哲学を求めました。それらを政府に認めてもらえたのは、ほかでもなく公明党が政権内にいたからでしょう。(『第三文明』2019年8月号)

と語っている。 続きを読む

新型コロナウイルス特集④――「緊急事態宣言」が発令

ライター
松田 明

史上最大規模の経済対策

 4月7日の夕刻、安倍首相は「緊急事態宣言」を発令した。
 この対象となったのは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県だ。
 3月27日午後の参議院本会議で、2020年度予算が成立。
 ここから補正予算の編成に入ることができ、7日の閣議では総額約108兆円となる史上最大規模の「緊急経済対策」を決定した。
 雇用の維持に向けて、雇用維持を図りながら一時的休業をする企業へ向けた雇用調整助成金の拡充(中小企業で休業手当の5分の4、大企業で3分の2まで助成率をアップ)。
 さらに雇用を続ける企業には、中小企業で休業手当の10分の9、大企業で4分の3まで助成率を引き上げた。
 売り上げが5%以上減少した中小企業やフリーランスを含む個人事業主を対象にした融資の金利を、今後3年間0%台に引き下げ。
 とりわけ厳しい企業には、中小企業で上限1億円まで利子分を国が補填し、実質無利子で借りられるようにする。
 また、売り上げが5%以上減った個人事業主も、3000万円まで無利子で融資を受けられることになった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流 第45回 特別編④ 剛柔流・宮里栄一の弟子たち

ジャーナリスト
柳原滋雄

宮城長順の後を引き継ぐ

順道館の2代目・宮里善博館長(中央右)と儀間哲さん(中央左)

 剛柔流を開いた宮城長順が1953年10月、65歳で急逝したとき、後を継承したのは34歳年下で警察官の宮里栄一(みやざと・えいいち 1922-99)だった。宮里は若い時分から柔道に打ち込み、空手と二足の草鞋をはいていた。
 宮里は柔道の講道館に倣(なら)い、順道館という当時としては立派な平屋建ての道場(その後鉄筋二階建て)をつくり、後進の育成に励んだ。現在、沖縄剛柔流の顔ともいえる東恩納盛男(ひがおんな・もりお 1938-)もこの道場の出身である。
 宮里は順道館を本部道場とし、1969年、沖縄剛柔流空手道協会の組織をつくって初代会長に就任した。
 宮里が残した功績として特筆されるのは、1981年の国体問題のときに、全空連加盟を推進する立場で中心的に尽力したことだろう。長嶺将真(松林流)、宮平勝哉(小林流)を支えて県空連の創設に邁進。その背景には、沖縄で国体を行うのに、「発祥の地」である沖縄から空手に参加しない選択肢はありえないとの宮里なりの思いがあった。
 柔道を通じて国体をとらえていた点で、空手だけを行っていた空手家とは違う立ち位置にあったと思われる。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第88回 生きるために書くのか、書くために生きるのか

作家
村上政彦

 僕は、生きるために書いている。この書くには、稼ぐという極めて実利的な要素が含まれている。しかし、では、稼げれば書かないでいられるか、というと、そうはいかない。書かずにはいられないのである。
 だから、僕の、生きるために書く、ことには、書くために生きる、ことが内包されている。でも、考えてみれば、生きるために書くことと、書くために生きることを分離するのは難しい。
 ある作家が、なぜ書くか? と訊かれて、(多分)ジョークをまじえて、「銀座にベンツ、軽井沢」といった。誰だったか忘れてしまったが、エンターテインメント系の作家だったとおもう。
 推測するに、この作家だって、たくさんある仕事のなかから、書くことを選んだわけで、稼ぎのいいことをいちばんに挙げても、やはり、彼の仕事には、書くために生きる、ということが含まれている。
 多かれ少なかれ、小説家や詩人、批評家などは、生きるために書いているが、書くために生きているのでもある。近年になって書くことで稼ぐのが難しくなってきて、いよいよその傾向が強くなりつつある。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流 第44回 特別編③ 沖縄空手案内センター ミゲール・ダルーズ

ジャーナリスト
柳原滋雄

沖縄空手の魅力を日本人以上に知るフランス人

 沖縄空手の取材をしていると、青い目をしたこの人をしばしば目にする機会があるはずだ。沖縄空手案内センターのミゲール・ダルーズ広報担当(1971-)である。

ミゲール・ダルーズさん

 フランス・ブルターニュ地方の出身で、14歳のときに始めた剛柔流空手の道場がたまたま沖縄空手の道場だった。競技にも参加したが、教える先生にも自分たちの空手は発祥の地・沖縄のカラテであるという自負があったという。家族的な雰囲気の道場で、先輩が日本に修行に行ってすごく強くなって帰ってきたのを見て、自分もいつか沖縄に行ってみたいという気持ちが強くなったと語る。
 1993年、22歳のときに来沖。沖縄の道場で汗を流すように。さまざまな人脈も増えていった。しばらくはフランス語教師や通訳・翻訳の仕事をしていたが、2005年に沖縄空手に関するNPOの仕事に誘われて関わるように。さらに2011年には任意団体の「沖縄伝統空手総合案内ビューロー」を自ら立ち上げ、稽古を希望する世界中の空手愛好家と沖縄の地元道場との橋渡し役をボランティアで行う活動を始めた。
 以来5年あまりで、受け入れた人数は700人を超えた。 続きを読む