西洋に影響を与えた日本の美
幕末から明治初期の頃、ヨーロッパで「ジャポニズム」が開花したことは広く知られている。1867年のパリ万博を契機に、ヨーロッパの人々は日本の美意識に出あい、それは瞬く間に芸術家たちから庶民のあいだにまで熱狂的に歓迎された。
本書のなかでも触れられているが、背景のひとつに「写真」の普及があった。何かを記録するだけなら、絵画より写真のほうが精巧だ。絵画には写真とは異なる新しい価値が求められていた。
そこに、「浮世絵」がもたらされる。それは、画題はもちろん、遠近法や陰影のつけ方など、ルネサンス以来の伝統的な西洋絵画とはまったく異なる美の表現をもっていた。
エドガー・ドガ、クロード・モネなど印象派の画家たちをはじめ、浮世絵に大きな影響を受けた芸術家は枚挙にいとまがない。モネは自邸の庭に睡蓮の池をつくり、そこに日本風の太鼓橋を架けた。モネを敬愛していたファン・ゴッホは浮世絵のコレクターであり、彼の部屋は浮世絵で埋め尽くされていたと伝えられている。 続きを読む