民進党はどこへ行く?(上)――野党第一党はなぜ国民の信頼を失ったのか

ライター
松田明

蓮舫氏「残念ながら信頼がない」

 民進党の代表選挙が9月15日に投開票される。
 すでに蓮舫・代表代行と前原誠司・元外相が立候補を表明しており、仮にほかの候補者が出たとしても事実上はこの2人の決戦となって、しかも蓮舫氏の当選がほぼ確実といわれている。
 その蓮舫氏は8月23日、東京都内の外国特派員協会で会見に臨んだ。
 冒頭、蓮舫氏は、こう述べた。

 民進党には多様な人材がいます。そして政策もあります。残念ながら、ないのは信頼です。

 そして、政権批判しかできない政党だと言われているのは当たらないとして、次のように安倍内閣を評した。

 例えば、私は安倍総理が掲げた3年半前のアベノミクス、素晴らしいと思っています。われわれができないことを全部やりました。株を上げて、為替を大きく振れて、空気を変えて、あした良くなる、こういうことがちゃんとできる人はリーダーだと、私は尊敬しています。

 蓮舫氏は、しかしアベノミクスは成果が出ていないと批判した。

 でも、結果どうでしょうか。あれだけ期待したアベノミクスでしたが、東日本大震災があったわれわれの政権の同じ時期を比べたら、GDPの実質成長率はわれわれの政権の半分です。結果が出ていません。

 この「GDP成長率」うんぬんは、民主党時代からしばしば繰り返されてきた詐術的な論法だ。以下のGDP推移を見れば一目瞭然で、民主党政権がスタートした2009年のGDPが、前年のリーマンショックを受けて大きく縮小していたから成長率が大きく見えるだけなのである。

【実質GDPの推移】
2008年 518兆円(自公政権)
2009年 490兆円(民主党政権)
2010年 512兆円(民主党政権)
2011年 510兆円(民主党政権)
2012年 519兆円(民主党政権)
2013年 526兆円(自公政権)
2014年 526兆円(自公政権)
2015年 529兆円(自公政権)
2016年 531兆円(自公政権/4月時点推計値)

 自公政権になって以来、GDPは着実に伸びている。平均株価はおよそ倍になり、最低賃金も就職率もすべて向上。国の税収も増え、雇用も大きく拡大した。
 民主党政権時代より自公政権に入ってからのほうが、はるかにすべてが良くなっていることは、さまざまな数字が明確に示している。

自公政権が見せた〝格の違い〟

 では、蓮舫氏が自ら認めたように、民進党に国民からの信頼がないのはなぜなのか。会見で、蓮舫氏はその原因には何も触れようとしなかった。
 彼女が「われわれができないことを全部やりました」と語ったとおり、2012年の年末に第2次安倍内閣が誕生して以降、自公政権は民主党政権時代の〝負の遺産〟を大きく転換してきた。
 その間、野党第一党である民主党(現在の民進党)は何をしてきたのか。
 本来なら、自分たちの失政を厳密に検証し、捲土重来して再度の政権交代が可能な政党となるよう明確な哲学と政策を示すべきだった。
 だが、民主党は政権を担うための建設的な議論も打ち立てず、ひたすら安倍政権批判に明け暮れた。国民は大いに失望し、2014年の総選挙では党代表であった海江田万里氏が選挙区でも比例区でも落選している。
 岡田執行部になっても〝対抗勢力〟になることと〝対立〟することのはき違えは、さらに深刻化していく。
 国際情勢の変化の中で安保法制議論が急浮上してくると、政策も哲学も議論できない民主党は、ついこの前まで政権党であったにもかかわらず、共産党や社民党などと連携して「戦争法」だと煽り立て、ひたすら「廃案」だけを叫び続けたのである。
 北朝鮮情勢や中国の海洋進出など懸案事項が重なるなかで、安倍政権は米国との連携を深めるだけでなく近隣諸国との対話も加速させ、平和安全法制が国会で成立した直後に、日中韓3カ国首脳会談を3年半ぶりに実現させた。
 現職の米国大統領の広島訪問を成功させる一方で日ロ平和条約締結への協議も進んでおり、プーチン大統領の訪日もこのほどロシア側から発表された。
 野党が「戦争」「戦争」と絶叫する中で、自公政権は経済を回復させ、着々と「平和」への手腕を発揮している。外交能力を欠き、日中関係を〝国交正常化以来最悪〟にさせた民主党政権とは、天地の違いといえるだろう。
 自民党に代わり得る政権政党として成熟を民進党に期待していた人々は興ざめし、それは民進党支持率の低迷として如実に表れてきた。
 民進党の無能さ――これが、蓮舫氏が語った「民進党に国民の信頼がない」第一の理由である。

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