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書評『僕たちはファッションの力で世界を変える』――イノウエ・ブラザーズの挑戦

ライター
本房 歩

「神々の繊維」

 2000年代に入って注目されるようになった「ソーシャル・デザイン」。不公正や不条理、社会問題をクリエイティヴな発想によって解決していこうという取り組みは、今や世界的な潮流になりつつある。
 それは、ソーシャル・ネットワークの普及によって、これまでにない形で人々がフラットにつながり、多様な情報が共有される時代がはじまったことと軌を一にしている。
 井上聡・清史の兄弟がアートスタジオ「ザ・イノウエ・ブラザーズ」を設立したのは2004年。07年から、南米アンデスの先住民と協働してアルパカの毛を使ったニット製品を作りはじめた。 続きを読む

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沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第10回 戦後沖縄空手界を支えた重鎮たち

ジャーナリスト
柳原滋雄

戦後沖縄空手界を支えた4人の巨星

 文献資料の乏しい空手の歴史にありながら、19世紀以降、著名な武人が集中して出生した時期がいくつか見受けられる。
 例えば、松村宗棍(1809年生まれ)、照屋規箴(同)、多和田真睦(1814年生まれ)を仮に第1グループと位置づければ、第2グループとして、親泊興寛(1827年生まれ)、安里安恒(1828年生まれ)、松茂良興作(1829年生まれ)、糸洲安恒(1831年生まれ)の一群が挙げられる。いずれも沖縄空手の草創期に名を連ねた武人にほかならない。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第51回 チカーノ詩礼賛

作家
村上政彦

 チカーノという言葉を聞く機会が増えた。チカーノ・ラップ、チカーノ・ムービーなど。それではチカーノの文学は、どうなっているのか? 気になって探してみたら本書が見つかった。
『ギターを抱いた渡り鳥 チカーノ詩礼賛』。著者によれば、

 本書は、チカーノ詩の代表的なものを網羅的に読解し、わが国におけるチカーノ詩研究の基礎づくりをもくろむ

 といっても、学術書ではない。チカーノ文学を読み解くには、その書き手が帰属するカトリック・スペイン語文化の知識が必要だという配慮から、紀行とロードノヴェルのかたちで、北米とメキシコの国境地帯の歴史や文化を紹介し、そのあいだにチカーノ詩が挟まれる。読み物としてもおもしろい。 続きを読む

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新潟県知事選が示したもの――なぜ野党候補は勝てなかったのか

ライター
松田 明

「代理戦争」にした野党

 10日に投開票がおこなわれた新潟県知事選挙は、花角英世候補(無所属)が当選した。
 花角候補が自民・公明の支援を受け、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・自由党・社民党・無所属の会という野党6党・会派は、野党系県議の池田千賀子候補(無所属)を推薦。
 事実上の〝与野党の対決〟とも目されたことで、その勝敗の行方が注目されていた。 続きを読む

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沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第9回 空手の淵源と流派

ジャーナリスト
柳原滋雄

福建省から伝わった武術

 かつての琉球王国および明治期以降の沖縄で生まれ育った武人は、名を残した著名な者から、無名のまま歴史のはざまに埋もれていった者まであまた存在すると思われる。
 空手の歴史研究は文献が極めて限られているため、学術的にはいまだ混沌とした分野に思える。それでも近年、さまざまな調査研究により、おぼろげな輪郭は浮かび上がってきた。 続きを読む