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連載エッセー「本の楽園」 第22回 詩人の魂、または「非常時」の言葉

作家
村上 政彦

 中学生のころに立原道造めいた詩を書いていた。いや、詩らしきものといったほうがいいか。憶えているのは、つたない言葉のつらなりだ。すぐに関心が小説に移って、結局、僕は詩人にはなれなかった。
 ひとは、どのようにして詩人になるのだろうか。『我が詩的自伝 素手で焔をつかみとれ!』は、日本を代表する詩人・吉増剛造の自伝だ。誕生から現在までを自作の詩を織り込みながら語っていく。 続きを読む

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カストロが軍服を脱いだ日――米国との国交回復までの20年

ライター
青山樹人

国民から「フィデル」と呼ばれた男

 11月25日、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が没した。
 1959年のキューバ革命によって米国の鼻先で社会主義国家を樹立し、以後、2006年に弟のラウル・カストロ氏に議長職を譲るまで、半世紀以上にわたって最高指導者として国を率いてきた。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第21回 ぶんがくが すき

作家
村上政彦

 これまで文学は、よく危機を主張してきた。危ない、といって、注目をあつめては延命する。だから、語られるところの文学の危機は、文学の内部の事情に由来していた。ところが、最近になって、延命の手段としての危機とはちがったほんとうの危機がきている。
 よくいわれる出版不況による読者の減少は、僕から見れば、それほど問題ではない。減少とはいっても、ある程度のコアな読者はいる。 続きを読む

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書評『GRIT やり抜く力』――話題のベストセラーを読む

ジャーナリスト/編集者
東 晋平

大事なことは「才能」ではなく「GRIT」

 「GRIT(グリット)」という言葉は、「レジリエンス(折れない心、復元力)」などとともに、近年の米国教育界、さらにビジネスやスポーツ界で重要視されてきた。GRITは歯をギリギリと噛みしめる音の擬音語で、まさに「やり抜く力」を意味している。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第20回 放哉のミニマルライフ

作家
村上政彦

 ミニマリズムという言葉がある。もとは芸術の分野で使われていたが、最近は簡素で質朴な生活の試みを指すこともあるようだ。衣食住にわたって、不要なものを削ぎ落とし、極めてシンプルな暮らしを送る人々をミニマリストというらしい。 続きを読む