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終わりのない旅の記録――書評『極北へ』(石川直樹著)

美術史研究者
高橋伸城

「今見ている世界」の外へ

 大学生になった1997年の夏、著者はカヌーを背負ってアメリカ大陸へと向かった。
 多くの冒険家たちを魅了してやまないユーコン川を下るためであった。
 カナダ西部の氷河に始まるこの細い流れは、アラスカの大地をヘビのようにうねりながらベーリング海へとそそぐ。
 極北へと何度も引き寄せられるきっかけともなったこの挑戦。出発から到着まで、すべてを一人でやり遂げた。 続きを読む

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沖縄県知事選のゆくえ④――「基地問題」を利用してきた人々

ライター
松田 明

辺野古混迷の〝元凶〟

 2009年8月30日の第45回衆議院議員選挙。
 その1ヵ月前の7月19日、民主党の鳩山代表(当時)は、海兵隊の普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と大見得を切った。
 この発言を前提に、民主党は選挙公約にも「米軍再編の見直し」を掲げ、同党は史上最多の308議席を獲得して政権の座に就く。
 沖縄県でも4つの選挙区すべて、民主党、社民党、国民新党の野党系が議席を独占した。
 ところが翌10年5月になると、鳩山政権はあっさり方針を転換し「県内移設」を示す。 続きを読む

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(ルポ)西日本豪雨~岡山の復興現場から

ノンフィクションライター
石戸 諭

 西日本豪雨の被災地でありながら、ボランティアや支援の一大拠点となっている自治体がある。甚大な被害が出た岡山県倉敷市真備町に隣接する総社市。なぜ総社市はいち早く支援に動けたのか。背景には行政・NGOとの日常からの提携、相互の信頼関係があった。 続きを読む

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沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流 第17回 しょうりん流(1)首里地域の伝統武術「首里手」

ジャーナリスト
柳原滋雄

首里士族の伝統武術として受け継がれる

 首里城裏手の小高い丘の上にある崎山公園。那覇市から港にかけて一望できるこの公園の一角に2018年7月、首里手(しゅりて)の先駆者たちの名前をしたためた顕彰碑が設置された。
 表には「空手古武術首里手発祥の地」と金彫りされ、10人の空手家の名前が刻まれている。生まれの早い順に並べると次のようになる。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第57回 越境する文学

作家
村上政彦

 最近、このコラムで越川芳明のチカーノ詩についての著作を取り上げた。とてもおもしろかったので、同じ著者のボーダー文学(芸術)についての著作を取り寄せた。『トウガラシのちいさな旅 ボーダー文化論』。こちらも、実におもしろい。
 著者は、北米とメキシコの国境を旅して画家のフリーダ・カーロを論じ、革命家チェ・ゲバラに思いを馳せ、タンジールに飛んでポール・ボウルズにインタビューを試み、沖縄でシマ言葉を小説の文体に活かそうとする作家と語り合う。ちいさな旅どころではない。 続きを読む