芥川賞を読む 第67回 『送り火』高橋弘希

文筆家
水上修一

圧倒的存在感で描いた快楽としての暴力

高橋弘希(たかはし・ひろき)著/第159回芥川賞受賞作(2018年上半期)

美しい描写から浮かび上がる凄惨さ

 選考委員の小川洋子が「他の候補作を圧倒する存在感を放っていた」と述べた高橋弘希の「送り火」。
 津軽地方の山間部にある、時代から取り残されたような過疎地域。生徒数の減少で廃校となる予定の中学校に、東京から越してきた主人公の歩。父親の仕事の影響で転校には慣れている彼は、新しい中学校でも要領よく同級生と馴染んだかのように見えたのだが、そこには歩がこれまで見聞きしたこともない、おぞましいほどの暴力の連鎖が隠されていた。
 選考にあたっては意見が二分していたようだが、その焦点となったのはまさにその暴力。否定的な意見で多かったのは、作者がその暴力を通して何を描こうとしているのかが分からないという意見である。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第111回 正修止観章 71

[3]「2. 広く解す」69

(11)病患境③

 (2)別釈③

 ③「治病の方法を明かす」

 この段は、「治法の宜対不同を明かす」と「正しく治を用うるの不同を明かす」の二段に分かれている。 続きを読む

大垣書店フェアのご案内

 
『心の深奥へ、思考の旅へ。一冬の終わりに「私」を聴く読書』

 大垣書店の京都市内各店舗で、2月28日(土)まで大垣書店フェア『心の深奥へ、思考の旅へ。一冬の終わりに「私」を聴く読書』を開催しています。
 大垣書店は、全国にグループ50店舗以上を展開する創業昭和17年京都発の地域密着型書店で、学術書や人文書をはじめ、一般書、文庫、新書まで幅広いジャンルの本を取り揃えています。

 この2月のフェアでは、京都市営地下鉄烏丸線沿いの店舗である、イオンモールKYOTO店、烏丸三条店、京都本店、イオンモール北大路店、佛教大学店、高野店など6店舗でフェア展開しています。
 興味のある方は、ぜひお近くの大垣書店にお立ち寄りください。 続きを読む

書評『八王子と福祉のまちづくり』――〝共生社会〟のヒントをさぐる

ライター
本房 歩

住民を巻き込んだまちづくり

 東京都で唯一の中核都市である八王子市は、かつては甲州街道最大の宿場町「八王子宿」として栄え、近代の初めには関東各地で生産された絹糸や絹織物などを横浜に移送する流通拠点として重要な位置を占めた。
 また、この半世紀あまりは大学のキャンパス移転や新設開学が続き、21の大学・短期大学・高専を擁して、約10万人の学生が集う学園都市としても知られている。

 平成に入った頃から、住宅地の郊外への進展、それに伴う大型ショッピング施設の郊外での開業など郊外地域の発展により、八王子駅周辺の大型商業施設が相次いで閉店するなど、中心部の「空洞化」が問題になった。
 しかし、その後の新しい都市計画によって中心市街地に若いファミリー層が暮らす集合住宅が増え、商業施設も充実して、現在では「居住者向けの街」として住民を巻き込んだ中心市街地の活性化が進んでいる。(「八王子市中心市街地活性化基本計画」参照) 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第110回 正修止観章 70

[3]「2. 広く解す」68

(11)病患境②

 (2)別釈①

 別釈は、「病を観ずるに五と為す。一に病の相を明かし、二に病の起こる因縁、三に治法を明かし、四に損益(そんやく)、五に止観を明かす」(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。大正46、106b13~14)とあるように、五段に分かれる。順に紹介する。 続きを読む