文明の行きつく先にある哀惜感
上田岳弘(うえだ・たかひろ)著/第160回芥川賞受賞作(2018年下半期)
収斂していくさまざまな仕掛け
文明を極限まで進化させて行った時、果たして人間は幸福なのか。文明社会の中で生きる私たちの多くが一度は考えたことのあるテーマについて、論文として〝考える〟のではなく、文学という芸術手法によって〝感じさせる〟作品である。
上田岳弘の「ニムロッド」の主な登場人物は、3名。多数のサーバーを運用するデータセンターで働く主人公の「僕」。日々サーバーの不具合をチェックする仕事をこなしていたが、ある時期から空いたサーバーを利用して仮想通貨によって金を稼ぐ仕事を任せられた。そんな「僕」の彼女は、外資系証券会社で働く社員、田久保紀子。前の夫との間にできた子どもを出生前検査の結果を受けて堕胎した過去を持ち、二度と結婚するつもりも子どもを産むつもりもない。そして、主人公の先輩である自称「ニムロッド」は、文学賞の最終選考に3度残った小説家志望の男性。世に出ることを諦めたが、自らのために小説を書き続けている。 続きを読む





