第2回 哲学を学ぶということ②~本との出会いを語る
(対談者)
福谷 茂(京都大学名誉教授、創価大学名誉教授)
伊藤貴雄(創価大学文学部教授)
名作の「子ども版」「再話本」も大切な読書の入り口
伊藤貴雄 福谷先生が、前回紹介されたトルストイの『人生論』を手にされたきっかけは、何かあったのでしょうか。

『少年少女世界文学全集8 トルストイ著作集』(武者小路実篤編/あかね書房版)の扉
福谷 茂 一番短いからです。伊藤先生が手に取った『オイディプス王』ではないですが(笑)。
もうすこし真面目に言いますと、どうも自分は人生というほどの手応えを持っていないな、と感じたということがありますね。僕がトルストイの『復活』を読んだのも同じような動機です。
僕が読んだ『人生論』は、武者小路実篤(※)が小学生向けに書き直した「リトールド・エディション(簡易版)」です。つまり元の話を再話した「再話本」(以後「子ども版」)です。
武者小路実篤は、ご存じのように文章は伸びやかで、トルストイの原文はもう少し難しいのですが、それをわかりやすく書き直しています。 続きを読む





