〝万年野党〟化する立憲民主党――野党第一党の責任はあるのか

ライター
松田 明

共感されない野党第一党

 野党が審議に復帰した国会で〝モリカケ〟問題を連日追及しているのに、世論調査ではまったく野党への支持が伸びていないことは前回指摘した。
 さらに5月28日の毎日新聞が報じた最新の世論調査(26、27日に全国を対象に実施)が明らかになると、SNSでもさまざまな驚きの声が上がった。
 加計学園をめぐる安倍首相の説明に「信用できない」とする厳しい声が70%に上った一方で、内閣支持率が前回4月の調査より1ポイント増え、不支持率は1ポイント減となったからだ(参考:ニュース記事)。
 さらに主な政党の支持率では、野党の支持率が相変わらず伸びていないこともわかった。
 1%程度の数字は誤差の範囲内という見方もできるが、この数字は野党なかんずく政権交代のカギとなるはずの野党第一党・立憲民主党が、まったく有権者の共感や期待を集めていないことを如実に物語っている。
 それでも立憲民主党は、よく分からない質問主意書を乱発して、官僚を疲弊させ政府に閣議決定をさせる戦術も、いっこうに変えようとしない。
 たとえば5月25日の政府の閣議決定を見ると、それらの多くが野党からの質問主意書に回答したものであることがわかる。一昔前には考えられなかった多さだ。
 ちなみに、あの「セクハラ罪と言う罪は存在するのか?」という質問主意書を出していた逢坂誠二議員(立憲民主党)が今回出したのは、「『大臣として』認定した『セクハラ行為』に関する質問主意書」なるものである。

 次に掲げる発言は、「大臣として」「認定した」「セクハラ行為」であるのか。
あ)「手しばっていい?」との発言
い)「抱きしめていい?」との発言
う)「胸さわっていい?」との発言
え)「パジャマで来ればよかったのに」との発言
お)「予算成立したら浮気する?」との発言

野党内からも疑問の声

 5月23日、「働き方改革」を議論する衆議院の厚生労働委員会で、立憲民主党の長妻昭氏(代表代行/政調会長)が質疑に立った。
 この日の持ち時間は、自民10分、公明5分に対し、立憲は35分、国民は25分、共産15分と、野党に大きく配分されている。
 ところが議事録(衆議院厚生労働委員会議事速報)を見るとよく分かるが、長妻氏は冒頭に申し訳程度に「働き方改革」に触れたあと、延々と「モリカケ」の話に入る。
 これにはさすがに、同じ野党の細野豪志議員(希望の党)もツイッターで、

 働き方改革法案をやっている厚労委員会で、森友学園・加計学園問題が議論されるのは違和感がある。(5月24日のツイッター)

と疑念を表明した。
 国民民主党は5月24日、衆参両院の議長に「森友学園・加計学園問題に関する調査特別委員会」の設置を申し入れた。
 先の細野議員のツイートは、それを前向きに受け止めたとする内容だ。
 そうでなくても野党の「19連休」で審議が遅延していた国会で、これ以上、重要法案の審議の場が片っ端から〝モリカケ〟に費やされることに、あたりまえだが野党議員のなかからも危機感が出ているのである。

関心はコアな支持層だけ

 だが、国民民主党が他の野党にも特別委員会設置への協力を呼び掛けたのに対し、希望の党と日本維新の会は賛同したものの、立憲民主党と共産党は拒否した。
 野党は24日には衆議院厚生労働委員会の運営が強引だとして委員長の解任決議案を提出。
 これが否決されると翌25日には加藤厚生労働大臣の不信任決議案を提出した。
 同日、細野議員は自身のブログでこう綴っている。

 政府案が修正され、高プロ適用時に本人の同意を得るだけではなく、離脱の意思表示もできることが明確になりました。私は、働き方改革法案に賛成します。

 昨日、採決された厚労委員長の解任決議案には、与党に慎重な国会運営を求めたいという思いを込めて賛成しました。しかし、委員長解任決議案が否決された以上、働き方改革法案を採決するのは、国会の役割です。GWを挟んで審議拒否をしておきながら、採決直前に厚労大臣の不信任案を出すのは、不合理だと私は思います。

 立憲民主党は先の総選挙で、まがりなりにも野党第一党の座を与えられたはずだ。
 もちろん主張は主張でよいだろう。しかし、採決になれば与党と一部の野党まで手を挙げる意見が通ることは明白だ。
 そうであるならば、ひたすら〝徹底抗戦するイメージ〟の演出に明け暮れるより、少しでも自分たちの修正意見を加えるのが野党第一党の責任ではないのか。
 現実的に巨大与党を説得し、政権を担える力量の一端を国民に示すべきではないのか。
 もはや党名の他は共産党とどこが違うのかよくわからない、「反対のための反対」を繰り返す、昭和の万年野党を彷彿とさせる立憲民主党。
 立憲民主党は、国民全体への責任よりも、一部のコアな支持層へのウケだけを気にしているように思えてならない。

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