避難民支援リードする公明党――ネットワーク政党の本領発揮

ライター
松田 明

<感動の再会を報じる『公明新聞』(4月7日付)>

政府を動かした公明党の提言

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、まもなく2カ月。ウクライナ政府の発表では既に2万人以上の一般市民が犠牲になり、国外への退避を余儀なくされた避難民は4月15日時点で480万人を超えている(国連難民高等弁務官事務所発表)。
 米国のサリバン大統領補佐官は戦闘が「数カ月間あるいはそれ以上長く続く」(「CNN」4月16日)と発言。ブリンケン国務長官も今年末まで戦闘が続く可能性があるとの判断を示している。
 これまでも世界の各地で多くの紛争はあったが、一国が他国の領土を侵略するという意味では、今回のロシアによる侵攻は第二次世界大戦後で稀に見る非常事態だ。
 公明党は3月14日の時点で、日本への避難民受け入れについて政府に緊急提言を申し入れた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第128回 雑の思想

作家
村上政彦

 先回のこのコラムで『弱さの思想』を取り上げた。実は、この『――の思想』は3部作で、最初が『弱さの思想』、次が、『雑の思想』、最後に、『「あいだ」の思想』となる。3冊ともすごくおもしろかったので、順にこのコラムで取り上げていきたい。
 今回は、『雑の思想』である。この本も対談集となっている。小説家と研究者の立ち話を聴くつもりで、気軽に読んでもらいたいとおもう。しかし中身は濃い。そこがこのシリーズのいいところだ。
 さて、「雑」というと、一般的にあまりいい意味で使われない。いい加減な仕事をすると、雑な仕事だといわれる。あるいは、部屋の中が散らかっていると、雑然としているといわれる。明らかに否定的なニュアンスを含んだ言葉だ。
 ところが、小説家の高橋源一郎と人類学者の辻信一は、「雑」に肯定的な意味、価値を見出そうとする。高橋が触れているなかで印象的なのは、小説家の言葉だ。 続きを読む

日本共産党のご都合主義――「革命政党」のプロパガンダ

ライター
松田 明

日本国憲法に反対した唯一の政党

 日本共産党・志位和夫委員長の、自衛隊をめぐるご都合主義的な発言が波紋を呼んでいる。
 志位氏は、4月7日におこなわれた同党の「参議院選挙勝利・全国総決起集会」で、きたる参院選の争点の一つだとして外交・安全保障に触れた。

いま、ロシアのウクライナ侵略に乗じて「戦争する国」づくりの大合唱が起こっています。日本共産党は、この逆流に正面からたちはだかり、「危機に乗じた9条改憲を許さず、9条を生かした外交で東アジアを平和な地域に」と訴えぬいてたたかいます。(『しんぶん赤旗』4月8日

 いつものように、まるで日本共産党が〝護憲の党〟であり、憲法9条を死守する党であるかのような話しぶり。
 しかし、大日本帝国憲法を日本国憲法へ改正する国会審議で、政党として唯一、日本国憲法に反対したのが日本共産党なのだ。 続きを読む

今こそ求められる「民間外交」の担い手――識者が読むSGI提言

中国清華大学高級研究員/中部大学教授
酒井𠮷廣

世界宗教が備える「doing」

 今回(第47回)の「SGIの日」記念提言を読んで、「doing(行動)」の書であるという印象が強く残りました。一般に、宗教は「聖典」(教典)を持ちますが、その共通点として「being(あり方)」を説いていることなどが挙げられます。具体的には、神仏の姿、教え、目指すべき社会、先人らの殉教の物語――といったものです。
 その上で提言は、日蓮の教え(being)を念頭に、眼前の地球上の諸課題を直視し、「このように解決していこう」との「doing」を国際社会・市民社会に呼びかけています。すなわち、教条主義に陥らず、刻々と変化する時代や社会状況に応じて、現実的かつ万人が共感し得る具体的方途を示している。そうした「画期性」が重要だと感じます。また、このような提言を40年も前から継続してきた熱意に感銘を受けました。
 さらに、もう一重思索を重ねると、創価学会ではすでに「being」が確立されているからこそ、明確な「doing」を展開できることが理解できます。これまで私は第三文明社の出版物はじめ、池田会長の著作を何冊も読んできました。中でも小説『人間革命』には、日蓮の教えを現代に継承する三代会長の平和行動と、草創期の学会員の物語が綴られています。この小説が「being」として受け継がれているから、学会員の皆さんもよりよい社会の実現に向かって「doing」できると考えられるのです。 続きを読む

芥川賞を読む 第16回 『蛇を踏む』川上弘美

文筆家
水上修一

理性と対称的な根源的な仄暗い力や衝動のようなもの

川上弘美(かわかみ・ひろみ)著/第115回芥川賞受賞作(1996年上半期)

石原慎太郎の辛辣な評価

 第115回の芥川賞は、当時38歳だった川上弘美の『蛇を踏む』が受賞した。『文学界』(1996年3月号)に掲載された約75枚の作品だ。
 この作品は、「ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった」という鮮やかな一文から始まる。その蛇が女に変身し、「自分はあなたの母親だ」と言い張り、主人公のヒワ子にも蛇の世界にくる(蛇になる)ことを何度も勧める。ヒワ子は、蛇の世界に魅かれながらも、その誘惑に抗い蛇にはなるまいと格闘する。
 一種の変形譚(人間が動植物などに変る転身物語)だが、この作品では、人間が蛇になるのではなく、蛇が人間になる。人間は、あくまでも蛇になることと格闘するのだ。
 この作品に対する選考委員の評価はきれいに2つに分かれた。まず厳しい評価を与えたのが、前回の選考会から参加した宮本輝と石原慎太郎だった。2人が共通して推したのは、この作品ではなく、福島次郎の『バスタオル』だった。 続きを読む