憲法無視の立憲民主党――国会で「信仰の告白」を迫る

ライター
松田 明

《予算委員会で質問する立憲民主党の打越さく良参議院議員》

信仰を問いただした打越議員

 その〝驚くべき質問〟は、10月19日の参議院予算委員会で飛び出した。
 立憲民主党の打越さく良議員が旧統一教会の問題で、山際大志郎経済再生担当相に対して次のように問いただしたのだ。

山際大臣はご自身の秘書には信者がいたということを否定されているんですけれども、念のため伺いますけれども、大臣ご自身はいかがなんでしょうか?(「参議院インターネット中継」10月19日予算委員会[3:33:00]から)

 山際大臣に関しては過去に何度も海外まで出かけて旧統一教会の会合に出席するなど、同会との関係が取り沙汰されている。
 しかも、そうした過去の会合出席や旧統一教会トップとの面会などが記録として発覚しても、「記憶にない」「記憶はあったが記録にない」など、きわめて不誠実な対応に終始してきた。
 今や同大臣が岸田内閣への信頼を大きく揺るがす要因の一つとなっていることは、誰の目にも明らかだろう。
 しかし、その山際大臣に対して国会審議の場で自身の信仰を告白するよう迫った打越議員の質問は、あってはならない異常なものだ。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第138回 新型コロナ下の思考

作家
村上政彦

 コロナ禍は、なかなか終わりそうにない。ワクチンや服用薬が開発され、インフルエンザのようなものになっていくという予想もあるが、強毒性の変異株が現れる可能性も否定はできない。
 外出するときにはマスクをすること、手洗いや消毒は、日常の一部になった。COVID-19というウイルスは明らかに僕らの生活を変えたのだ。こういうとき、知識人の役割は、明晰な知性の力を使って、僕らがこのウイルスとどのように向き合えばいいのかを考えることだろう。
 すでに2020年、世界的な思想家であるスラヴォイ・ジジェクは、邦訳『パンデミック 世界をゆるがした新型コロナウイルス』という本を送り出している。このなかで彼は、我々はハグや握手の機会を奪われてしまったが、互いに眼を見つめることで、じかに触れ合うよりも心を開くことができる、親しい人と距離を取らなければならないが、そのためにこそ、彼らの重要さを体験できる、と述べている。 続きを読む

宗教と政治をめぐるデマ――田中智学が唱えた「国立戒壇」論

ライター
松田 明

古ぼけたデマを語る学者

 さる宗教学者が月刊誌で公明党について語っているのを目にした。いわく〝公明党が結党の際に掲げた「王仏冥合」とは、政治と宗教の一体化をめざすという意味〟〝言論出版妨害事件によって、公明党は国立戒壇を目的に活動できなくなった〟等々。
 中間団体としての宗教団体の果たす役割を重視する識者がいる一方で、学者を肩書きとする人物が、こうしたデマに等しい話を嬉々としてメディアで消費させている姿は残念というほかない。
 一般の人の多くはもちろん、若い公明党支持層にさえ馴染みのない話だろうと思う。それほど古ぼけた話なのだが、この際、基本的な誤りだけは指摘しておきたい。
 公明党が結党されたのは1964年。この頃、宗教界を中心に日本社会には、創価学会が外護していた日蓮正宗の「国教化」や「国立戒壇」建立をめざして政界進出したのではないかという憶測が飛び交っていた。
 創価学会は日蓮の仏法を信奉実践する教団だが、まず日蓮の遺文のどこにも「国立戒壇」という言葉は存在しない。 続きを読む

フランスのセクト対策とは(下)――ヨーロッパでの創価学会の評価

ライター
松田 明

典礼法人としてフランスSGIを承認

 フランスにおける宗教法の権威であり、フランスSGIの法人機構の整備・統合にも携わってきたグザヴィエ・デルソル弁護士はインタビューに対し、

 2006年、最後となった第4次国会セクト報告書で、ついに、「創価学会は、その教義においても、事実関係においても、いかなるセクト的逸脱に該当する行為は存在しない」と断言されるまでになったのです。
 この点は本質的に重要です。というのは、創価学会には、何ら批判できるような教義を含んでいないと「議会」が認めたという点であります。
 その後は、学会に関して、いかなる国会の報告書でも言及されなくなり、「セクト」と同一視される教団と見なされていません。(『創価新報』2022年9月21日付)

と明言している。 続きを読む

フランスのセクト対策とは(中)――首相通達で廃止されたリスト

ライター
松田 明

フランスの「セクト規制法」とは

 フランスでのセクト対策の、その後の経過をさらに追っていこう。
 1996年にセクト関係省監視室が設置された。だが、これは年次報告書を1回出しただけで終わり、1998年10月、新たに省庁横断の関係省セクト対策本部「ミルス」(MILS/Mission interministérielle de la lutte contre les sectes)が設置された。本部長に就任したのは、あの問題だらけの第1次国会報告書を作った元社会党議員アラン・ヴィヴィアンである。
 ヴィヴィアンは当時、民間の有力な反セクト団体「ロジェ・イコール・センター」の会長をつとめていた。
 1999年6月には、やはりセクト対策の中心的人物だった共産党議員のジャン=ピエール・ブラールが「セクトと金」という報告書を出している。
 2001年6月、フランス議会は「セクト規制法(人権および基本的自由を侵害するセクト的団体の防止および取り締まりを強化する2001年6月12日の法律)」を制定した。
 これが最近、日本でしばしば取り上げられるフランスの「反セクト法」だ。 続きを読む