参院選2022直前チェック④——若者の声を聴いているのは誰か

ライター
松田 明

野党の手法は「ファシズムの土壌」

 先ごろ『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください 17歳からの民主主義とメディアの授業』(日本実業出版社)という本が出た。
 著者である東京工業大学の西田亮介准教授は、若者の投票率が低い背景を、若者にとってコストはかかるものの短期的なベネフィットが感じられないことだと指摘している(『第三文明』8月号)。
 政治に関心を持ち、各党各候補の政策や能力を吟味し、時間を割いて投票所に足を運ぶという「コスト」に対し、自分の1票が社会を変える実感という「ベネフィット」が見えづらいのだ。

投票に行かない若い人々への政党のアプローチについては、与党がコストをかけ続けているのに対し、野党はこれといった施策が見えてきません。利益団体政治を悪魔化して「市民のために」といった抽象的な言葉で有権者に呼び掛ける手法は、昔からファシズムの土壌だと言われており、私も危ういと思います。(『第三文明』8月号

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参院選2022直前チェック③――コロナ対策、与野党の明暗

ライター
松田 明

厚労省にワクチンの予算確保を促す「あきの公造」参議院議員(2020年7月参議院予算委員会)

日本の対策は他国の模範になる

 中国の武漢で広がっていた新型肺炎について、WHO(世界保健機関)が「新型ウイルスの可能性」をはじめて指摘したのが2020年1月初旬。同21日に、WHOは「ヒトからヒトへの感染が見られる」と発表した。
 この発表から参院選投票日前日の7月9日で900日となる。
 未知のウイルスに世界全体が覆われる人類史上かつてないパンデミック。各国政府は暗中模索のなかで、さまざまな対策を講じた。
 同じ東アジアでも中国は「ZEROコロナ」を掲げ、強権的なロックダウンを繰り返して早い時期に成果をあげたように見えた。
 韓国はPCR検査を徹底し、台湾はITをフル活用して、いずれも一定の成果が見られた。同じ太平洋の島国であるニュージーランドも「ZEROコロナ」政策を打ち出し、やはり高い成果をあげていた。
 これに対し、日本は憲法との兼ね合いから移動を禁止するような「ロックダウン」は採用せず、「WITHコロナ」で慎重に社会経済を回しながらワクチン接種の徹底で乗り切ってきた。 続きを読む

空手普及100年――唐手から空手へ(中)

ジャーナリスト
柳原滋雄

確定できないままの講道館演武会

 1957年に88歳で死去した沖縄出身の船越義珍(ふなこし・ぎちん 1968-1957)が、東京で空手指導したのは戦争中に大分県に疎開したおよそ2年間を除く33年の歳月である。
 逝去半年前の1956年秋、船越は産業経済新聞社から『空手道一路』という自身のエッセイ的自伝を上梓した。空手にかけた自身の生涯を綴ったものだったが、記憶のみに基づいて書いた部分が多く含まれることは指摘されてきた通りだ。
 例えば文部省主催の運動体育展覧会のため上京した肝心の1922(大正11)年のくだりも、「たしか、大正10年の末だったと思う」などと書く。信頼できる資料と照らし合わせないまま活字にしたことが明らかだ。こうした傾向はこの著作に限ったわけではない。 続きを読む

参院選2022直前チェック②――物価高対策を検証する

ライター
松田 明

実態に沿った主張はどちらなのか

 今回の参院選で有権者がもっとも関心を持っているのが「経済対策」すなわち「物価高対策」だ。
 NHKが6月24日から3日間調査したアンケートでは、「参院選で最も重視する政策課題」として43%が「経済対策」を挙げた。
 言うまでもなく、これは2月にはじまったロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってもたらされたもの。世界規模で、原油価格や穀物価格が高騰したのだ。1月の時点で、国民の最大の関心事は「新型コロナ」だった。 続きを読む

参院選2022直前チェック①――データで検証する各党の公約

ライター
松田 明

ポピュリズムの罠

 7月10日投票の参議院議員選挙は、すでに期日前投票がはじまっている。総務省の発表では、公示からの4日間に期日前投票を済ませた人の割合は、2016の参院選と比較して19.72%増えているという。
 一方で、どの政党の候補者に投票すべきか、なかなか判断に迷っている人もいるだろう。
 SNSなどでは、さまざまなイシューについての各党の賛否を単純に「○」「×」で示したものなどが流れてくる。一見「わかりやすく」見えるが、あまり単純化された情報は、やはり眉に唾をつけておいたほうがいい。
 たとえば「選択的夫婦別姓」や「同性婚」への賛否なら答えがシンプルなので「○」か「×」でもいいだろう。しかし、「消費税率引き下げ」「最低賃金1500円以上」などとなると、そもそも設問自体が不適切だと言わざるを得ない。 続きを読む