参院選直前チェック⑦ 若い世代ほど自公政権支持な理由

ライター
松田 明

18歳、19歳の過半数が自公支持

 今回の参議院選挙で、野党は完全に戦い方を誤ったと思う。
 各社の世論調査でも、有権者がこの選挙で最も重視していることは「暮らし」であり「医療や社会保障」だ。
 だが、アベノミクス批判はしても、それに代わる経済政策・社会保障政策を打ち出せない野党は、「平和安全法制廃止」「改憲阻止」と国民の不安を煽る選挙戦略をとった。
 読売新聞社が行った選挙戦最終盤の情勢調査では、あらたに選挙権を得た18歳、19歳では、自民党と公明党の支持層が5割を超えているという興味深い結果が出た。

 18歳、19歳は安倍内閣の経済政策を6割弱が評価していて、30歳以上の世代よりも10ポイント以上高くなっている。(YOMIURI ONLINE/7月6日

 あたりまえだろう。この3年半で株価も上昇し、雇用が増え、有効求人倍率はすべての都道府県で1を超し、高卒就職率・大卒就職率いずれも記録的な改善を見せた。最低賃金も上がり、税収も大きく伸び、株価も民主党政権時の2倍になったのだから。

アジテーションにすぎない

 今の日本政治が抱えている最大の問題は、〝まともな野党がいない〟ということに尽きる。
 ヒステリックに「打倒! 安倍政権」「安倍政権を許さない!」と叫んだところで、そんなものは思想でも理念でも政策でもなく、単なるアジテーションにすぎない。
 安倍政権を倒したあと、誰がどのような理念と政策で、誰の支持を得て、どんな政権を立て、この国を今より良くしていくのか。彼らはそれにはまるっきり答えられない。
 共産党は「国民連合政府」と言い、民進党は「共産党との連立はあり得ない」と言う。安倍政権を倒したあと、どうするのか。理念も政策もバラバラであることを指摘されると「それは横に置いて」(共産党・志位委員長)と言い逃れる。冗談ではない。

誰も戦争など望んでいない

 若い世代を中心に、国民の半数近くの人は自公政権を支持している。
 べつに、その人々は戦争をしたがっているわけでもないし、自民党の憲法草案に賛成しているわけでもない。
 そうではなく、もっと現実の暮らしをみつめ、将来のことを考えているのだ。議論を積み上げていくことを知っているし、そういう政治を望んでいるのだ。
 極端な話ばかりを出し、不安や批判、怒りだけをわめき立て、希望や安心を示せない、結果を出せない政党にはうんざりしているのだ。

 自民・公明の与党には、地方創生と一億総活躍社会の具体像を示す大きな課題が残っています。野党もまた、与党が主張する地方創生と一億総活躍社会を推進せざるを得ないでしょう。ところが民進党や日本共産党などの野党は「平和安全法制廃止」と叫ぶばかりで、5年後の社会、10年後の社会の姿を語ろうとはしません。(『第三文明』8月号 藪野祐三・九州大学名誉教授)

 政権選択可能な二大政党制の夢を託されていたはずの民進党は、支持率の低迷に焦り、何を血迷ったか共産党に取り込まれてしまった。おそらく選挙結果は厳しいものになるだろう。負け具合によっては早々に分裂するかもしれない。
 その民進党を食ったことで勢いを増すのは共産党だ。実績もない、経済政策もない、政権担当能力もない、どの国とも対話ができない、「革命」を叫ぶイデオロギー政党が、人々のネガティブな感情を煽り、おいしいところを獲る。
民進党にとって悔やんでも悔やみきれない選挙になるだろう。

「参院選直前チェック」シリーズ:
参院選直前チェック① イギリスの「後悔」は対岸の火事ではない
参院選直前チェック② 当選した「野党統一候補」はどこへいくんだ?
参院選直前チェック③ 「3分の2を取らせない」のごまかし
参院選直前チェック④ 平和安全法制は「戦争法」なの?
参院選直前チェック⑤ 数字で見る「アベノミクス」
参院選直前チェック⑥ 「成熟社会」が求める政治とは