投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

アメリカ・ルネサンスの眩い光彩――書評『詩集 草の葉』

ライター
本房 歩

36歳のデビュー作

 ウォルト・ホイットマンは、およそ200年前の1819年、農夫ウォルター・ホイットマンの次男として、ニューヨーク州ロングアイランドに生まれた。
 じつは父親が自分と同じ名前を彼につけたので、正しくはウォルター・ホイットマン・ジュニアということになる。
 父親はまもなく大工に転身したものの一家の生活は苦しく、ウォルトも11歳から弁護士事務所の雑用係として働きはじめる。その後、見習いを経てニューヨークで植字工となるが、大火で職場の印刷所を失う。故郷に戻って小学校の教師をし、再びニューヨークに戻るとジャーナリストや印刷業などで身を立てていた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第53回 ジュネ――生きるために書いた作家

作家
村上政彦

ジャン・ジュネの作品を手に取ったのは、おそらく中学生のころだった。実家の近くにある、町の小さな本屋の、狭く薄暗いフロアに置かれた本棚に並んでいたのだ。『泥棒日記』だったとおもう。ジュネの代表作である。
『泥棒日記』は、ひとりの作家が泥棒のことを書いた作品ではない。泥棒が、泥棒のことを書いた作品だ。中学生にきちんと読めたかというと、いま考えれば心許ない。ただ、ジュネがどういう作家であるかは感じ取ることができた。彼は、僕がそれまで読んできた作家とは、まったく違う作家だった。 続きを読む

第196通常国会を振り返って――〝嫌がらせ〟に終始しただけの野党

ライター
松田 明

免職を含む懲罰制度

 第196通常国会が7月22日に閉会した。1月22日の召集から、会期延長を含んで182日間の長丁場となった。
 この間、財務省の決裁文書書き換えなど重大な不祥事が発覚し、安倍首相は20日の記者会見で「行政をめぐるさまざまな問題が起こった。行政のトップとして深くお詫びする」と陳謝した。
 政府は20日午前、「行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議」を官邸で開き、不正行為が刑法上の罰則にあたらない場合でも、免職を含む懲戒処分の対象にするなど再発防止策をまとめた。
 これは、自民党・公明党の公文書管理の改革に関するワーキングチームが政府に申し入れた提言を反映したものだ。 続きを読む

「地震への備え」を万全に――〝次〟はいつどこでも起き得る

ライター
松田 明

地震が起きやすい状態に

 大阪府北部を震源とする地震からおよそ1ヵ月が経った。6月18日午前7時58分に発生した最大震度6弱(マグニチュード6.1)の地震が発生した。
 死者4人、重傷者15人、軽傷者419人。住宅被害は全壊10棟をはじめ、一部損壊まで含めると33180棟にのぼっている(いずれも総務省消防庁発表7月17日時点)。
 発生から11万2千戸以上でガスの供給が止まり、復旧まで1週間を要した。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第13回 沖縄独自の流派・上地流(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

上地流はなぜ世界に広まったのか

 戦後なぜ上地流は世界に広まったのか。沖縄に駐留していた米兵が母国に帰国し、そこから世界中に広まったと説明するのは高良信徳(前出)だ。
 特にベトナム戦争時代、発進基地となった沖縄では、米兵が戦場から帰ってくると、暇をもてあましてできるだけ体を鍛えようとする風潮があり、空手道場に通ってきたという。米軍の部隊が各流派と契約して彼らに教えていた時代もあったという。 続きを読む