若いころに、ある現代思想の雑誌で、アフォーダンスの特集をやっていた。当時の僕の意識は、ほとんど素通りに近かった。そういうものがあるんだ、ぐらいの受け止め方で、詳しく読みもしなかった。
それから30年以上を経て、先輩作家と話していたら、アフォーダンスの話題になった。ぜひ、勉強したほうがいい、といわれて、僕はこの先輩作家をとても尊敬しているので、さっそくアフォーダンスの教科書的な本を取り寄せた。
僕の頭は、典型的な文系である。最近は文理融合などといわれて、理系に強い作家が重んじられる。僕は、だめだ。まず、数学が嫌いだ。数字が嫌いだ。見ていると、眉間に皴が寄ってくる。
しかしどういうわけか、エヴァリスト・ガロアなんて数学者に憧れた。僕にとって、ガロアは数学者の姿をした詩人だった。彼は、20歳で天才的な業績を残し、革命に関わり、女のために決闘で死んだ。これはれっきとした詩人の生涯ではないか。 続きを読む





