忘れられた〝最先端の街〟
「それでは、中に入りましょう」
若い係官は日本語でそう言うと、持っていた鍵の束で厳重な錠を開けた。
「足もとに注意してください」
狭い入口から、彼が手にしている小さな懐中電灯に導かれて、私たちは薄暗い石窟の中へと足を踏み入れた。 続きを読む
「それでは、中に入りましょう」
若い係官は日本語でそう言うと、持っていた鍵の束で厳重な錠を開けた。
「足もとに注意してください」
狭い入口から、彼が手にしている小さな懐中電灯に導かれて、私たちは薄暗い石窟の中へと足を踏み入れた。 続きを読む
私たちは3時間近くも砂漠の真ん中で取り残されていた。外気温はマイナス20度。周囲は見渡すかぎり荒涼とした岩砂漠が続く「ゴビ灘」である。
2014年12月下旬、2人の青年と一緒に2週間をかけて中国を旅した。北京から西安、さらに甘南チベット自治州夏河県、蘭州、敦煌と奥地に入っていく。西安を発つ未明にひどい風邪をこじらせ、その身体で標高3200メートルの夏河に入り、長距離バスで蘭州に下り、夜行列車で極寒の敦煌に至るという過酷な日々だった。 続きを読む