沖縄県知事選のゆくえ⑤——「対話」の能力があるのは誰なのか

ライター
松田 明

不公平な地位協定

 沖縄県では9月に入ってからも、読谷村(よみたんそん)で酒に酔った米兵が住居に不法侵入し、高校2年の少女が生後5ヵ月の妹を抱いて近所の家に逃げ込むという事件が起きた。
 読谷村議会は19日の臨時会で、全会一致で意見書と抗議決議を可決。決議では被害者への完全補償、日米地位協定の抜本的見直しなどを求めた。
 沖縄県が今年3月にまとめた『他国地位協定調査 中間報告書』は、1972年の本土復帰以降、昨年末までに米軍人等による刑法犯が5967件、航空機関連の事故が738件発生したと記している。 続きを読む

終わりのない旅の記録——書評『極北へ』(石川直樹著)

美術史研究者
高橋伸城

「今見ている世界」の外へ

 大学生になった1997年の夏、著者はカヌーを背負ってアメリカ大陸へと向かった。
 多くの冒険家たちを魅了してやまないユーコン川を下るためであった。
 カナダ西部の氷河に始まるこの細い流れは、アラスカの大地をヘビのようにうねりながらベーリング海へとそそぐ。
 極北へと何度も引き寄せられるきっかけともなったこの挑戦。出発から到着まで、すべてを一人でやり遂げた。 続きを読む

沖縄県知事選のゆくえ④——「基地問題」を利用してきた人々

ライター
松田 明

辺野古混迷の〝元凶〟

 2009年8月30日の第45回衆議院議員選挙。
 その1ヵ月前の7月19日、民主党の鳩山代表(当時)は、海兵隊の普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と大見得を切った。
 この発言を前提に、民主党は選挙公約にも「米軍再編の見直し」を掲げ、同党は史上最多の308議席を獲得して政権の座に就く。
 沖縄県でも4つの選挙区すべて、民主党、社民党、国民新党の野党系が議席を独占した。
 ところが翌10年5月になると、鳩山政権はあっさり方針を転換し「県内移設」を示す。 続きを読む

(ルポ)西日本豪雨~岡山の復興現場から

ノンフィクションライター
石戸 諭

 西日本豪雨の被災地でありながら、ボランティアや支援の一大拠点となっている自治体がある。甚大な被害が出た岡山県倉敷市真備町に隣接する総社市。なぜ総社市はいち早く支援に動けたのか。背景には行政・NGOとの日常からの提携、相互の信頼関係があった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第17回 しょうりん流① 首里地域の伝統武術「首里手」

ジャーナリスト
柳原滋雄

首里士族の伝統武術として受け継がれる

 首里城裏手の小高い丘の上にある崎山公園。那覇市から港にかけて一望できるこの公園の一角に2018年7月、首里手(しゅりて)の先駆者たちの名前をしたためた顕彰碑が設置された。
 表には「空手古武術首里手発祥の地」と金彫りされ、10人の空手家の名前が刻まれている。生まれの早い順に並べると次のようになる。 続きを読む