沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第26回 極真から沖縄空手に魅せられた人びと(上)「金城健一」

ジャーナリスト
柳原滋雄

 1970年代以降、日本本土を席捲した極真空手――。型よりも組手を重視し、実戦カラテを標榜することで、劇画や映画を通して若者を中心に爆発的なブームを巻き起こした。今回から3回にわたり、フルコンタクト空手を経て沖縄伝統空手に魅せられた3人の空手家を紹介する。1回目は、極真空手がまだオープントーナメントという全国規模の大会開催を行ってまもないころ、沖縄空手の本場から単身で極真に乗り込んだ経験をもつ金城健一館長(琉誠館)に迫る。 続きを読む

画家から生まれた「書物の子」――書評『この星の絵の具 [上] 一橋大学の木の下で』(小林正人著)

美術史研究者
高橋伸城

不意の出会いに備えて

 手のひらにすっぽりおさまる小さな本。白地のカバーに四角い青が浮かぶ。
 著者は小林正人氏。世界的に名の知れた画家である。国際展の中でも古い歴史をもつサンパウロ・ビエンナーレでは、日本代表として作品を展示した。
 長年にわたって色やかたちと徹底的に向き合ってきた一人の画家が言葉を手にしたとき、できあがったのは単なる絵画論ではなかった。それは自然と「小説」の体裁をとった。 続きを読む

日中の未来をつくる作文コンクール――石をも貫く雨垂れのごとく

ライター
大森貴久

5年間で2000点を超えた応募作品

コンクールの表彰式(北京市内)でスピーチする陳文戈氏

コンクールの表彰式(北京市内)でスピーチする陳文戈氏

 2012年秋、日中関係は〝国交正常化以来最悪〟の冷え込みを見せた。関係の改善がまだ見通せていなかったその翌年、1つの作文コンクールが開催に向けて始動する。
 中国外文局に所属する人民中国雑誌社による「Panda杯全日本青年作文コンクール」である。その名の通り、日本の青年たちから中国にまつわるエッセイを募集する同コンクールは2014年にスタートし、昨年(2018年)で第5回を迎えた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第66回 『ブローティガン 東京日記』

作家
村上政彦

小説を読むようになったころ、手に取ったのは、最初のうちはヨーロッパの近代小説だった。やがてモダニズムの作品に親しむようになって、気づいたらアバンギャルドへたどりついていた。
いちばん気に入ったのは、フランスのヌーボーロマンだ。代表的な作家であるアラン・ロブ=グリエの作品を追いかけた。彼の作品で手に入るものは、すべて読んだ。といってもフランス語は読めないので、翻訳されたものに限る。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第65回 英文創作教室

作家
村上政彦

むかしは翻訳者で読ませる本、というのがあった。ロシア文学なら神西清(じんざい・きよし)、フランス文学なら生島遼一(いくしま・りょういち)。最近そういう人は少なくなったが、いないわけではない。僕がこの人の翻訳ならと手に取るのは、アメリカ文学の柴田元幸さんだ。
図書館をパトロールしていたら、新刊コーナーに「柴田元幸編・訳」の本があった。タイトルを見ると、『英文創作教室』とある。著者はレアード・ハント。まだ読んだことはないけれど、名前は知っている。アメリカの小説家だ。 続きを読む