小池知事と都議会公明党(下)――識者が期待する知事と公明の連携

ライター
松田 明

自民・民進・共産の限界

 6月1日、小池都知事は自民党に離党届を出し、自ら率いる地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任した。
 自民党東京都連の下村会長は、小池知事と自民党都連との対決姿勢を鮮明にした。
 ともあれ、これで有権者にとって、小池都知事に対する都議会の各会派の立ち位置が明確になった感がある。
 地方選挙の第一人者である河村和徳・東北大学大学院准教授は、自民党東京都連は〝高齢の男性候補者が男性を中心とする組織の支えで当選〟を目指す「おとこ選挙」だと評したうえで、

 当然、政策なども男性支持者の意向に沿ったものが重視されます。(中略)なぜ小池都知事がここまで支持されるのかという冷静な考察もないのです。(『第三文明』2017年7月号

と指摘。さらに、民進党と共産党には期待ができないと手厳しい。

 一方、他党に目をむけると、本来、自民党に取って代わるべき民進党は支持率低迷で離党者が続出。このままでは、党の都組織の維持もままならない状況です。また共産党は、築地移転問題の争点化を目指して築地再整備を掲げたかと思えば、憲法改正の話題を持ち出すなど、非自民・反安倍(総理)層の取り込みに躍起で、都政についての議論を深めることができません。(同)

都議会公明の決断を評価

 三重県知事を2期務めた経験を持ち、「地方分権」「マニフェスト」の第一人者である北川正恭・早稲田大学名誉教授は、都政の意思決定過程をオープンにした小池都知事の誕生を評価したうえで、

 これからは、いたずらに都庁や都議会を批判するのではなく、都民のために実りある政策を積み上げていくことが重要となる。そのターニングポイントとなるのが、7月2日投開票の東京都議会議員選挙である。(『潮』7月号

と指摘する。
 そして北川氏は、都議会公明党が改革に消極的だった自民党都連に三下り半を突きつけて独自の改革案を進め、小池都知事率いる都民ファーストの会と政策協定のうえで選挙協力をしたことについても、重要な点を指摘した。

 都政にとってたいへん良いことだと思う。
 それはなぜか。都知事は執行権の責任者であり、都議会は議決権を持つ決定権者である。都知事と都議会が対等な関係で機関競争をすることで、地方自治の民主制度は担保されている。
 ところが「都議会のドン」と呼ばれる一部の有力政治家が間に入り、都知事と都議会の間で慣れ合いの関係が成立してきた。これが東京都の大きな問題だった。都民ファーストの会と公明党の連携は、東京都の慣れ合い体質解消に一石を投じる動きだ。(同)

 公明党と都民ファーストの会は「議会改革を本気でやる」といっている。これは大いに期待したい。(同)

東京から日本の福祉を動かす

 これまでも、国政で動かなかったものを東京都政から全国に波及させてきた事案は数多い。しかも、その点で小池知事がタッグを組む都議会公明党には、「児童手当」「ハイパー・レスキュー隊」「財政の見える化」「街のバリアフリー化」など、東京発の非常に多くの実績がある。
 都政改革が進むことは、そのまま国政はもとより、全国の地方政治にも〝変革〟をもたらす好機となり得るのだ。
 社会活動家でもある湯浅誠・法政大学教授は、「誰も置き去りにしない社会」へ、東京都が先駆的な役割を果たすことに大いに期待する。

 そのコーディネートを担う都政の中核的な役割を果たすのが、都議会公明党です。公明党は一貫して都政の柱として存在してきました,特に福祉の分野においては、これまでの実績からいっても、公明党への期待は大きいです。
 ぜひ、都政の中で、単に支援するだけの枠を超えた〝循環的な福祉(持続可能な福祉のあり方)〟を実現していってほしいと思います。(『第三文明』2017年7月号

「首長との協調が不可欠」

 一方で、連日の都議選報道のなかで、ことさら面白おかしく劇場型の政治報道を煽りたがる一部メディアには、「公明党は選挙目当てに自民党を裏切った」「都民ファーストの会との政策合意は、小池都知事へのすり寄りである」という類の論評が見られる。
 先の河村・東北大学大学院准教授は、こうした論評について、

「地方自治とは本来どうあるべきか」との本質的議論から有権者を遠ざけるものです。(『第三文明』2017年7月号

 政治を安定させ、住民の望む政策を実現するためには、首長との協調関係が不可欠であり、それは東京都も例外ではありません。(同)

と、厳しく批判している。
 本稿の(上)で述べたように、二元代表制である地方政治では、人事と予算の編成権を持つ首長と、議決権を持つ議会とが、是々非々の関係でなおかつ、ともに住民の代表として協調できなければ政治が前に進まない。
 孤立無援に近い形で東京都政で大鉈を振るおうと登場した小池都知事にとって、都議会公明党は、「是々非々」で協調し競争し合える唯一の会派である。しかも、多彩で優秀な人材をそろえ、半世紀以上の歴史と蓄積を持つ「都政の頭脳」(小池知事)であり、国会・地方議会3000人のネットワークを持つ政党、さらに地域の隅々まで住民とのコミュニケーションを持つ政党、国政では連立与党である。
 7月2日の都議選は、否応なく、小池知事(都民ファースト)&都議会公明党と、その他の会派のぶつかり合いになる。
 小池知事の掲げる改革が、さらに加速するか失速するか、文字どおり〝改革〟の行方を決する天王山の勝負なのである。

「小池知事と都議会公明党」シリーズ:
小池知事と都議会公明党(上)――今回の都議選で何が決まるのか?
小池知事と都議会公明党(下)――識者が期待する知事と公明の連携

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