危うく微妙で不思議な男女の人間関係を描く
大道珠貴(だいどう・たまき)著/第128回芥川賞受賞作(2002年下半期)
しょぼい初老の男と冴えない30代女性の不思議な関係
「小説」というくらいだから必ずしも大そうな話である必要はない。ただ少なくとも心揺さぶられる感覚や多少のカタルシスはほしいと思うのだが、ところが芥川賞にはそうしたものは必ずしも必要なく、むしろ書き手の上手さのほうが重要なのだろう。
第128回芥川賞の受賞作は、大道珠貴の『しょっぱいドライブ』だった。『文學界』に掲載された91枚の作品。
肉体的にも人格的にも頼りなく魅力もない、ただお金だけは持っているしょぼい六十代の九十九(つくも)さんと、地方劇団のスターに憧れながらもまともに相手をされない、これまた冴えない三十代の「わたし」の微妙な関係を実に丹念に描いている。 続きを読む