姑息な手法に終始する野党5党(上)――あの「閣議決定」仕掛けたのは誰か

ライター
松田 明

審議を阻止する戦術

 5月18日、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、自由党の野党5党は、茂木敏充・経済再生相に対する不信任決議案を国会に提出した。
 この日は環太平洋経済連携協定(TPP11)関連法案の内閣委員会での採決が予定されていたのだが、不信任決議案の提出で委員会審議は止まってしまった。
 またその影響で、与党が今国会での成立をめざしているギャンブル依存症対策基本法案の審議入りも23日に持ち越しとなった。
 立憲民主党の辻元清美・国対委員長は会見で、

 TPPのような重要な法案をたった3日間(の審議)で、強引に採決をする。この安倍暴走列車に、ブレーキをかけなければならない。(『朝日新聞』5月18日付)

 重要法案の在庫一掃セールのように短い時間で「行け行け、どんどん」で進める安倍政権のあり方にストップをかける。(『毎日新聞』5月19日付)

などと発言した。

さぼっていたのは野党

 周知のように国会には決められた会期がある。
 野党5党が4月に〝審議拒否〟という戦術で職務である国会審議を放棄したのは、さまざまな法案の可決が見送りになり廃案となることを狙った「日程闘争」だった。
 1日に数億円もの歳費を使いながら、国会で成果を出させずに先送りさせる。何の生産性もない、古めかしい万年野党の戦術である。
 だが、「18連休」「19連休」などと揶揄されたこの審議拒否作戦は、国民からも大きな反発を買い、結局ゴールデンウイークが明けると、野党5党は審議に戻らざるを得なくなった。
 さて、そのうえで先の辻元議員の発言を考えてみよう。
 会期末までの法案成立に向け、国民にとって極めて重要なTPP法案などを急いで審議しなければならなくなった第一の責任は、莫大な歳費を浪費して審議拒否を続けてきた側にあるのではないだろうか。

「閣議決定」を煽り立てる

 ところで同じ5月18日、政府は「現行法令において、『セクハラ罪』という罪は存在しない」とする答弁書を閣議決定した。
 このことが報じられると、ネット上などではこうした閣議決定をした安倍政権を非難・揶揄する声が相次いだ。
 たとえば「しんぶん赤旗」のツイッターは、

 最低を、底なしに更新していく安倍政権。(日本共産党 前衆議院議員・池内さおり氏の同日のツイート)

という非難のツイートを、わざわざ公式リツイートしている。
 そして、立憲民主党は公式ツイッターで、同じようにこの閣議決定を報じた朝日新聞を引用し、

 閣議決定をすることなのでしょうか……。(5月18日午後9時23分「ウエブ魚拓」)

と、政府を非難するツイートをした。

「閣議決定」を仕掛けた政党

 実際、この閣議決定の報道に触れて、まるで政府が馬鹿げたことをやっているように感じた人も少なくなかっただろう。
 だが、これはそうした国民の批判をわざと招くために野党が仕掛けたものだった。
 政府には、国会から質問主意書を出されると、たとえどれほどくだらない内容であっても、それに対する「答弁書」を閣議決定して議長に提出しなければならない義務がある。
 そしてこの制度に便乗し、「セクハラ罪という罪は存在するのか?」などという馬鹿げた質問主意書を提出したのは、立憲民主党の逢坂誠二議員なのだ。
 立憲民主党は、政府に馬鹿げた答弁書を閣議決定させるために、ややタイミングをずらし、あえて戦術としてこのような質問主意書を提出したのである。
 そうすれば、政府は今さらながら「現行法令において、『セクハラ罪』という罪は存在しない」ということを、わざわざ閣議決定しなければならなくなるからだ。
 こんなくだらないネガティブキャンペーンのために、歳費で賄われる国会議員としての身分を使い、役人に答弁書を作らせ、内閣法制局に審査をさせ、閣議の時間を割かせた。
 なお、この〝自作自演〟の舞台裏が明るみに出ると、立憲民主党の公式ツイッターは先述の煽りツイートを素知らぬ顔で削除している。
 これが、今の野党第一党がやっている国会での仕事なのだ。

「姑息な手法に終始する野党5党」シリーズ:
姑息な手法に終始する野党5党(上)――あの「閣議決定」仕掛けたのは誰か
姑息な手法に終始する野党5党(下)――世論は野党の姿勢を評価せず

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