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【コラム】「地球外生命」の存在が証明される日

ライター
青山樹人

地動説、進化論に次ぐ第三の人類史的発見が、ごく近い将来に到来する。

「もう一つの地球」が発見される日は近い

 7年後の2020年に東京でのオリンピック開催が決まったが、早ければそれと変わらないくらいの近い将来に、人類史に特筆されるような〝ある出来事〟がやってくるだろうと予想されている。
 それは、地球以外の「生命が存在する惑星」が発見される可能性だ。
 もちろん、この広大な宇宙のどこかに地球に似た環境の惑星が存在し、そこにはきっと何らかの生命が存在して不思議でないということは以前から語られていたし、SF映画の世界ではお馴染みの話ではある。けれども、それらは想像の域を出ないことだった。
 そうではなく、地球以外の星に生命が存在する〝科学的な動かぬ証拠〟が、きわめて近い将来、発見されるだろう――。系外惑星(私たちの太陽系以外の恒星系に存在する惑星)探査の世界的権威であるトロント大学のレイ・ジャヤワルダナ教授は、強い自信をもってそう語っている。(『もう一つの地球が見つかる日/系外惑星探査の最前線』阪本芳久訳/草思社)

 夜空に見える満天の星は、ご存じのようにこの宇宙に存在する太陽と同じような恒星である。例外的に光っているのは、地球の衛星である月と、水星、金星、火星、木星、土星といった私たちの太陽系の惑星だ。地球から非常に近い場所にあるこれらの星々は、太陽の光を反射して輝いている。
 地球から一番近い恒星であるケンタウルス座アルファでさえ、4.4光年の距離にある。光の速さで4年半。地球から冥王星までは光の速さで5時間少々なので、お隣の太陽までといっても桁違いに遠い。
 少々意外な感じがするが、じつはこれら宇宙にある別の太陽にも惑星が存在していることが「確認」されたのは、ごくごく最近の1995年。その直接撮影に世界で初めて成功したのがジャヤワルダナ教授だ。
 それまで、この宇宙で私たちの太陽系以外に惑星が存在することは推論でしかなかった。各国で莫大な研究予算を投じても芳しい成果が得られず、1980年代になると系外惑星について語ること自体がキワモノ扱いされていたという。それが最初の確認から20年足らずの間に、今では約1000個もの系外惑星が見つかっている。

 では、どうやってそれらの系外惑星に生命が存在する「証拠」が確認できるのか。
 1つのきっかけは1989年に打ち上げられた木星探査機ガリレオを使って、遠い宇宙から「地球に生命が存在する証拠が見つかるかどうか」をあえて観測したことだった。星が放つ光や電磁波をスペクトル分析(成分に分解し配列すること。虹の7色もスペクトルの一例)することで、その大気の成分がかなり詳細にわかるのだ。その結果、地球の大気が科学的平衡状態から著しく乖離していること、それが地球上の生物の活動に起因することが突き止められた。
 ジャヤワルダナ教授は、「天文学者たちは、今後数年以内に何十個もの地球型系外惑星が発見され、おそらく2020年までには、系外惑星のスペクトル撮影による生命の兆候の探査が実施されると考えている」(前掲書)とし、地球以外で生命が存在する「証拠」を発見する歴史的な日はきわめて近いと述べている。

人類の精神性、宗教性が一変していく

 ところで、その近い将来にやってくるであろう歴史的な日――われわれが宇宙の唯一の住人ではないと確認する日――は、人類に何をもたらすのだろうか。
 ジャヤワルダナ教授は、それはコペルニクスの地動説が旧来の宇宙観であった天動説を覆した事件、ダーウィンの進化論が天地創造の生命観を覆した事件に匹敵する、人類の3つめの大事件になるはずだと語る。
 人類の科学史を画する出来事になると同時に、それが人類の精神性そのものを大きく転換し跳躍させることは疑いないからだ。
 あたかも幕末の黒船の来航が人々に「日本人」という意識をもたらしたように、今まで地球という枠の中だけで自他の差異にとらわれてきた私たち人類は、おそらく初めて人類という種の全体、地球上の生命全体に対する親密な〝一体感〟をリアルなものとして体験するに違いない。

 生命の存在する惑星が1つ、また1つと発見されていけば、漆黒の広がりだった宇宙は一転して「生命」の音律と歌声に溢れた世界となる。人々は宇宙そのものを一つの「生命の海」と考えるようになるのかもしれない。あるいは、別々の場所に生命を誕生させている大宇宙そのものの明確で強固な意思のようなものさえ実感するだろうか。
 それはもはや単なる天文学的な知見の拡大というよりも、まったく新しい宗教的な覚醒といってよい。その国の子ども、その民族の子どもから、大宇宙の子どもへ。「自分は何者なのか」「自分はどこから来てどこへ行くのか」という私たちのアイデンティティの感覚は根本的に変わり、一気に広がっていくはずなのだ。
 死生観や宗教観が大きく揺り動かされるだろうし、文学や芸術はもとより、環境や貧困といった地球的諸課題に対する人々の意識まで、大きく変わっていくに違いない。「地球外生命」との邂逅を機に、おそらく人類は格段に精神を成熟させていくことになる。
 系外惑星探査研究の飛躍的な進歩によって、そうした人類史を大転換させるような歴史的事件が、早ければこの10年とか20年のうちにもやってくるのだ。どうやら私たちは奇跡的な時に生まれ合わせているのである。


あおやま・しげと●東京都在住。雑誌や新聞紙への寄稿を中心に、ライターとして活動中。著書に『宗教は誰のものか』(鳳書院)など。