第71回 正修止観章㉛
[3]「2. 広く解す」㉙
(9)十乗観法を明かす⑱
⑤善巧安心(2)
(2)別して安心を明かす①
ここから、別して安心を明かす段である。では、止観によって心を法性に安んじることがうまくいかない場合はどうすればよいのであろうか。『摩訶止観』には、「若し倶に安んずることを得ずば、当に復た云何んがすべき」(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅱ)、608頁)と、問題提起をしている。うまく行かない様子については、「復た之れを止(とど)むと雖も、馳すること颺炎(かげろう)よりも疾(と)く、復た之れを観ずと雖も、闇(くら)きこと漆・墨に逾(こ)えたり」(同前)と述べている。私たちの心が御しがたいことを踏まえて、心を静止させようとしても、吹き上がる炎よりも早く走り去り、これを観察しようとしても、漆と墨よりも暗闇であるので観察できないと述べている。
次に、具体的に心を安んじる方法について、他人に教えること(教他)と自分で行なうこと(自行)の二種に分ける。はじめに、前者の他人に教えることについては、さらに聖人の師が教える場合と凡夫の師が教える場合の二種に分けている。 続きを読む