第83回 正修止観章㊸
[3]「2. 広く解す」㊶
(9)十乗観法を明かす㉚
⑥破法遍(11)
(4)従空入仮の破法遍③
③入仮の観(3)
(c)病に応じて薬を授く
病に応じて薬を授ける段では、薬に世間の薬と出世間の薬を分けている。前者については、
若し衆生に出世の機無く、根性は薄弱にして、深化に堪えずば、但だ世の薬を授くるのみ。孔丘(こうきゅう)・姫旦(きたん)の如きは、君臣を制し父子を定む。故に上を敬し下を愛して、世間は大いに治まる。礼律・節度ありて、尊卑に序有り。此れは戒を扶(たす)くるなり。楽(がく)は以て心を和し、風(ふう)を移し俗を易(か)う。此れは定を扶く。先王の至徳・要道、此れは慧を扶く。元古(がんこ)は混沌として、未だ出世に宜しからず、辺表の根性は、仏の興ることを感ぜず。我れは三聖を遣(つか)わして、彼の真丹(しんたん)を化せしむ。礼義は前に開き、大小乗の経は、然して後に信ず可し。真丹は既に然れば、十方も亦た爾り。故に前に世法を用て、之れに授与す、云云。(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。以下同じ。大正46、78中28~下8)
と述べている。 続きを読む