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メインプレイヤーになった公明党――『いま、公明党が考えていること』を読む(上)

ライター
松田 明

 『いま、公明党が考えていること』は、キリスト教徒にして元・外務省国際情報局主任分析官、日本を代表する論客である佐藤優氏が、公明党代表の山口那津男氏と縦横に語りあった対談である。手軽な新書サイズなうえに、対談なので読みやすく、また、どこから読んでもかまわない構成になっている。

日中関係を〝過去最悪〟にさせた民主党政権

 公明党は1999年10月、自民党小渕内閣の要請を受け政権に参画した。3年3ヵ月の民主党政権時代を除き、すでに通算13年以上、日本の政権の一翼を担っている。
 今や、日々の政治報道で「公明党」の名を見聞きしない日はない。
 注目すべきことは、民主党政権以前の最初の10年間は、連立政権といえども公明党は自民党に比べればはるかに小さな政党であり、〝脇役〟の感をぬぐえなかった。
 野党時代から一貫して「大衆福祉の党」として歩んできたこともあり、マスコミの目線も〝公明党は福祉担当〟という認識の枠を出なかったように思われる。実際、「税制」「外交」「安全保障」といった国家の中枢にかかわる分野は、依然として自民党の独壇場だったのである。
 ところが、民主党が内部の権力闘争に明け暮れ、東日本大震災の対応で国民の不信を買い、尖閣国有化で中国との関係を〝国交正常化以来、最悪〟にして政権から退場。2012年暮れにふたたび自公連立の第2次安倍内閣が発足して以降、様相が変わってきた。

 政権交代を果たした当時、安倍総理に対して「歴史修正主義者ではないか」「靖國神社への公式参拝をやりかねない」という懸念が中国ではつきまとっていました。中国は日中関係改善にかなり慎重だったわけです。せっかく政権交代を果たして自公両党が与党になったのに、日中関係に政治的空白を作るわけにはいきません。
「いまを逃してはいけません」と安倍総理に強くお話をし、総理親書をお預かりしました。そして政権交代直後の13年1月25日、私が訪中して中国共産党の総書記になった習近平副主席とお会いするわけです。(山口那津男)

政権奪還1ヵ月で習近平と会見

 当時、尖閣問題から中国ではすさまじい反日デモが続いており、中国共産党のトップとしては日本政府と握手をすることなど本来できない状況だった。
 米国をはじめ国際社会も注視していた中で、政権発足から1ヵ月を経ずして、日本の連立政権の党首が訪中し、習近平氏は柔和な表情でこれを出迎え、その模様は中国国内でも報道されたのだ。
 自民党単独の政権では絶対に開かない扉だっただろう。

 文化大革命の負の遺産が残っている時代に、創価学会と公明党は日中国交正常化へ向け、両国の関係を切り拓く方向性を示しました。かつて日中国交正常化提言を発表した池田SGI会長に対する変わらぬ敬意が、習近平さんの中にはきっとあるのでしょう。(佐藤優)

 以後、民主党政権が破綻させていた日中関係は大きく改善されていく。
 習氏が安倍首相の親書を携えた山口代表と会見した背景には、公明党と、その支持母体である創価学会が、日中国交正常化の最大の立役者であり、以降、一貫して中国と互いに深い信義を築き上げてきたことがある。中国社会は、その歴史をよく知っている。
 山口代表はこれまで計5回、習氏と出会いを重ねている。日本の政治家で5回も習近平氏と会っている者はほかにいない。
 もし公明党が政権に入っていなければ、日本はこのタイミングで中国との関係改善の端緒をつかむことができなかった。
 これ以降、中国海軍のレーダー照射事件や安倍首相の靖國参拝など、両国に緊張が高まった時期でさえ、公明党は若手議員を中心に訪中を重ね、中国側は常にこれを笑顔で迎えてきた。
 公明党の存在によって、日本の「政権」は中国との信頼関係を維持し続けてくることができたのである。

国際情勢を変化させた公明党外交

 さらに2015年、平和安全法制が成立した3週間後の10月8日、山口代表はソウルで朴槿惠大統領と会談している。就任以来、あれほど日本政府に対して頑なな姿勢を変えなかった朴槿惠大統領が、笑顔で日本の「政権」党首を迎えた。

 安倍総理の親書を手渡すと、朴槿惠大統領は「日中韓首脳会談を実現したい。安倍総理とソウルで会うことを楽しみにしています」と柔らかい笑顔で語ってくれました。
 10月15日には、北京の人民大会堂で習近平国家主席とお会いしています。(山口那津男)

 朴槿惠大統領は、安倍総理との日韓首脳会談を2年半以上も開いていなかったわけです。日中関係、日韓関係が冷えこむなか、山口代表は重要な役割を果たされました。(佐藤優)

 韓国政府も中国政府も、1ヵ月も経ない期間のうちに、連立政権の一方のトップである山口代表の訪問を受け入れ、国家元首がこれを笑顔で迎えて法案に理解を示し、安倍首相の親書を受け取ったのである。
 平和安全法制が、野党の言うような「戦争法案」であれば、韓国も中国もこうした態度を示すわけがない。
 米国にとって中国は日本以上に重要な国だ。北朝鮮情勢が緊迫する時期に、同盟国である日本が中国や韓国とギクシャクした状態であることは、東アジアを不安定にさせ、米国の大きな懸念だった。
 日本の政権に公明党というパートナーが存在することが、これほど日本外交のリスクを下げ、国際秩序の安定に寄与するのだという事実に、米国はじめ国際社会は目を見張ったことだろう。

国際秩序とコミットできる宗教

 創価学会の初代・2代の会長は戦時中に投獄され、初代会長は獄死させられた。戦後の創価学会は、その〝仇討〟を誰も想像できなかった形でやってのけた。
 つまり、イデオロギー政党が好んで掲げる「国家権力との対決」というような、民衆を憎悪に駆り立て、社会を分断し、不安定化させる方途をとらなかった。
 1対1の対話で大衆の支持を広げながら、人を励まし、人を育て、社会のあらゆる分野に陸続と無数の人材を輩出していった。一方で日本のナショナリズムを軽々と超克して、世界各国にも〝その国、その社会のための宗教〟として布教を進めていった。
 あえて言えば、1960年の池田大作第3代会長の就任から50年をかけて、創価学会は日本という国家の枠内で〝統治権力と正々堂々とコミットできる宗教〟であることを証明していったのだろうと思う。
 それは大衆を〝対決〟に煽動するような方向性でもなければ、従順に〝庇護〟を求める関係でもない。そもそも世界宗教化している創価学会にとって、日本という一国家に従属的に取り込まれてしまうならば、諸外国のSGIの理解を得られなくなってしまう。
 そして、折しも米国が「世界の警察」を降りて、国際秩序が多国間の連携で保たれる時代に入ったタイミングで、創価学会は次の50年に向けて、今度はその国際秩序とも真正面からコミットできる宗教であることを証明しはじめた。
 ローマ法王の就任式典にSGIが正式に招聘され、イタリア共和国首相がSGIの会館を訪問して宗教協約を締結し、その模様が全土に生中継されたことは、これを端的に象徴している。

 いまやSGIは、世界192カ国・地域へと発展しました。(中略)
 キリスト教はミラノ勅令(313年)によって与党化しました。世界宗教のうち、与党でない宗教なんてありません。(中略)
 与党・公明党の活躍は、創価学会が世界宗教化していくプロセスと密接にリンクしているのです。(佐藤優)

 時を同じくして、公明党は〝脇役〟どころか、「外交」「安全保障」「税制」という国家の枢要で自民党をリードする立場になった。佐藤氏の言うとおり、これは国際社会が創価学会を〝国際秩序とコミットできる宗教〟だと認識したことと、軌を一にしているだろう。
 米国にも、韓国にも、台湾にも、香港にも、ロシアにも、各国政府の公認のもとにSGI組織は存在している。公明党を日本の政権運営に参画させることは、本来ならSGIにとって、とてつもないリスクでしかない。
 しかし、創価学会と公明党は、その巨大な困難をそのまま、諸外国と日本との「信用」「信頼」「対話の橋」へと転じてみせる離れ業をやってのけたのである。

「『いま、公明党が考えていること』を読む」シリーズ:
『いま、公明党が考えていること』を読む(中)――平和安全法制に公明党が打った「くさび」
『いま、公明党が考えていること』を読む(下)――軽減税率で見せた公明党の現場感覚
 

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