特集㉖ 頓挫した日顕の謀略——「食法餓鬼」の行状

ライター
青山樹人

情報公開をした創価学会

 創価学会側が混乱に陥ることを狙って、日蓮正宗はあえて1990年の年末ギリギリに不意打ちで謀略を仕掛けた。
 だが、創価学会の対応は素早かった。
 総講頭罷免がマスコミ発表された直後には、全国各地で緊急の会合がもたれ、一連の経過について発表された。
 学会本部は、会員への情報公開に踏み切った。宗門との間でのやりとりを包み隠さず公表し、何が起きているのかを率直に伝えたのである。
 不安と緊張をにじませて続々と会館に集っていった全国の学会員は、帰路には爽やかな表情で会館をあとにした。数年来、池田SGI会長から深い精神性を学んでいた会員たちは、即座にことの真相を理解したのだった。
 要するに、宗門が再び権威主義を振りかざして、広宣流布に励む学会に牙をむいてきた。そうであるならば、われわれは二度と悪僧たちの好き勝手にはさせない。日蓮仏法に照らして、どちらのあり方が正しい信仰なのか、はっきりさせてやろう――。
 衝撃的な罷免の公表から3日後の大晦日深夜、全国の日蓮正宗末寺には、例年どおり学会員が多数参詣した。しかし、元朝勤行が終わり、住職が宗務院から言い含められたSGI会長批判の〝説法〟をはじめた途端、会員たちの多くは誰に言われるでもなく席を立って寺をあとにした。
 日顕の読みは、完全に外れたのである。

チャップリンのごとく

 年が明けた1991年1月2日。例年ならSGI会長はじめ学会首脳が総本山に登山する日。しかし、宗門が世間の耳目を集めるために記者会見を開いた直後である。SGI会長は「無用の混乱を避けるため」本山行きを見合わせ、秋谷会長以下の執行部だけで登山した。
 経緯の説明を求めた学会首脳に対し、日顕は〝お目通りかなわぬ身である〟という時代劇のような言い草で、面会を拒絶した。
 1月6日。東京・千駄ヶ谷の創価学会国際友好会館で開かれた第37回本部幹部会。「総講頭罷免」から初めて、SGI会長が公式の場に姿を見せる会合である。
 全国の学会員は衛星放送を見つめながら、今回の宗門の暴挙に対してSGI会長がどんな言葉を発するか、固唾をのんで見守っていた。
 だが、SGI会長は終始一貫して明るく陽気に振る舞い、チャップリンのまねをして会場を沸かせた。

チャップリンは「ユダヤ狩り」と戦うこの映画(『チャップリンの独裁者』)を大戦中につくった。もっとも人間的な「笑い」によって、もっとも非人間的な「暴力」と戦ったのである。(本部幹部会でのSGI会長のスピーチ)

 SGI会長は、宗門については直接ひとことも発言せずに、独裁者ヒットラーの横暴と戦い続けたチャップリンの生き方を語り、会員を励ましてスピーチを終えた。
 会員たちは、SGI会長の指導者としての器の大きさに胸を熱くした。
 民衆を圧迫する権威や権力の横暴など、笑い飛ばせ。安心して、顔を上げて、平然と前に進め。チャップリンのまねをして見せたSGI会長は、無言のうちにそう伝えたのである。
 動揺したのは日顕であり、混乱に陥ったのは宗門の側だった。
 学会員が寺への信徒登録に殺到するどころか、学会の反応が迅速で、SGI会長のもとビクともしない。しかも、これまでの宗門側の理不尽なやりとりまで公表されてしまったのである。

プール付き20億円の豪邸

 本部幹部会があった同じ1月6日。日顕は総本山大石寺に全国の僧侶・寺族を集め、全国教師指導会を開催した。冒頭、本住坊住職の秋元意道が音頭をとり、軍歌「敵は幾万」を大合唱した。
 不意打ちで総講頭罷免をおこなったことに意味不明の言い訳をしていた日顕は、

これから、非常に厳しいこと、大変なこと、さまざまなことが起こってくると思います。大聖人様のこのようなお言葉があります

 そう言って、「結句は一人になりて日本国に流浪すべきみにて候」という日蓮大聖人の御書を手前勝手に引用し、

たとえ粥をすするようなことになっても……

と、涙を流して嗚咽しはじめた。
 創価学会を切り、信徒を失えば、末寺の僧侶たちはたちまち困窮するだろう。それはすべて日顕が仕掛けた謀略の結果である。
 出席していた僧侶たちは、〝瞬間湯沸かし器〟の異名で知られる日顕が泣いてみせたことに驚いた。そして、地方の末寺僧侶ほど、今後の生活に思いをめぐらして顔をこわばらせた。
 粥をすするようなことになっても……と満山の僧侶の前で泣いてみせた日顕だったが、3カ月後の3月12日、衝撃的なスクープ情報が宗内から漏れた。
 日顕が都内に、時価20億円の超豪邸を計画していたのだ。
 極秘計画だっただけに、日顕のあわてようは尋常ではなかった。
 翌日、大石寺内事部名で全国の教師(住職の資格者)宛てに、通達がファックスされた。「東京都目黒区八雲大石寺出張所建設計画並びに取り止めについてのお知らせ」という、長い名前の通達である。

崩壊した罷免の根拠

 通達の中で大石寺側は、「将来寺院として活用する場合は多少狭いとの意見もありましたが」と、意味不明の弁明をしている。
 のちに流出した図面によれば、地番は目黒区八雲5丁目114番3-17。都内屈指の高級住宅街である。敷地面積555、57㎡。地上2階、地下1階。床面積は合計631㎡。エレベーター付き。地下には車が5台入る駐車場。プールとジムまである。
 水屋を備え「炉」を切った12畳の茶室。食堂が16畳。肝心の仏間はわずか10畳。むろん、こんなものが〝寺院〟であるはずもない。
 末寺の住職たちに「粥をすすってでも」と言った当人は、同じ時期に、都内屈指の超高級住宅地に、信徒の供養でプール付きの豪邸を建設しようとしていたのである。
 かりそめにも「御法主上人猊下」といわれてきた高僧は、法臘60年を超えても欲望に歯止めが利かない単なる〝食法餓鬼〟だった。年末の「総講頭罷免」以来、ことのなりゆきを見つめていた全世界の学会員は、これで日顕という人物の本性を知った。
 ショックを受けたのは僧侶や法華講も同じだった。年末の宗規改正で法主への批判は罰則の対象となったため、表だって批判できないが、どう考えても納得がいくはずがない。
 一方、学会からは宗門当局に対して、一つ一つ、真相を究明する質問の書面が出され続けた。なにしろ、正月に学会執行部が総本山に登山しても、「お目通り叶わぬ身である」と日顕は面会を拒否した。
 会員に経過を公表し、歴史に残しておくうえでも、学会は宗門の理不尽な行動に対する疑念を、正式な文書で問いただしたわけである。
 その結果、宗門側は早々に、「お尋ね」で問題視したSGI会長の本部幹部会での発言といわれるものに、何カ所もテープの反訳(文字化)ミスがあることを認めざるを得なくなった。
 また、1月6日の日顕の発言にあったデタラメな事実経過も、当然のことながら撤回せざるを得なくなった。宗門の機関誌『大日蓮』が収録した自身の説法について、日顕は編集部に〝訂正〟を申し入れることになる。
 総講頭罷免の理由として挙げたことがらは、早々に崩壊したのである。本来なら、日顕が全面的に謝罪して引責辞任しなければならない事態であった。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。