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池田SGI会長70年の軌跡(下)――新しい世界を開くための教育

ライター
青山樹人

世界に広がる創価教育

 池田SGI会長が創価大学の設立構想を発表したのは、1964年6月30日のことだった。創価学会第3代会長就任からわずか4年。まだ会長が36歳の時である。
 そして40歳となった1968年には、創価一貫教育の第一歩となる創価中学・高校が第1回の入学式を迎える。3年後の71年には、創価大学が開学した。
 当時、日本も世界も「若者の反乱」の時代だった。国内には大学紛争の過激な嵐が吹き荒れていた。
 しかし、会長はこの教育の行き詰まりと混迷を、新たな教育の潮流を開く時代の表徴だと見ていた。
 開学する創価大学の基本理念に、会長は創立者として3つのモットーを提唱する。

「人間教育の最高学府たれ」
「新しき大文化建設の揺籃(ようらん)たれ」
「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」

 創価教育の理念は、創価学会初代会長・牧口常三郎が遺したものであり、大学創立は初代と2代の会長から託された願業である。
 だからこそ設立にあたっては、けっして一宗一派のためではなく、あくまでも人類に貢献する学問の府にしていくことを明確に示した。
 事実、創価学園でも創価大学でも、いわゆる宗教教育はおこなっていない。2001年にカリフォルニアに開学したアメリカ創価大学は、世界数十ヵ国から集った学生の過半数が非仏教徒なのである。
 現在、創価高校は東京校・関西校ともに優れた実績が評価されてスーパーグローバルハイスクールに指定され、創価大学も2014年に文科省の「スーパーグローバル大学創成支援」に採択された。
 幼稚園から大学院までの創価一貫教育の府からは、各界に多彩な人材を送り出している。また、ブラジル、香港、韓国、マレーシア、シンガポールなど諸外国にも、創価教育の学舎が広がり、各国で高い評価を得ている。
 アメリカ創価大学は創立から日が浅いにもかかわらず、すでに米国内のリベラルアーツ・カレッジでは上位50位以内を定位置にし、4割近い卒業生がケンブリッジやオックスフォード、ハーバードといった欧米の名門校の大学院等に進学している。
 また学生の卒業率と1年次から2年次への進学率などを評価したランキング「the Happiest Freshmen」では、全米のすべての大学のなかで、イェール大学、シカゴ大学に次ぐ第3位となっている。

名門大学からの顕彰

 池田会長に対しては、国連からの4つの表彰、20数ヵ国からの国家勲章、「桂冠詩人」称号など、数多くの世界からの顕彰が寄せられているが、なんといっても異彩を放っているのは400近い名誉学術称号であろう。
 人類史に並びない圧倒的な数の学術・教育界からの顕彰であり、今後もこれほど世界の学問の府から栄誉をもって迎えられる人は現れないのではないかとさえ言われている。
 しかも、それらを贈ったのは、モスクワ大学、北京大学、グラスゴー大学、ボローニャ大学、シドニー大学、サンマルコス大学、ナイロビ大学など、文字どおり5大陸を代表する名門校である。大学としての「第1号」、あるいは「アジア人第1号」「日本人第1号」も多く含まれる。
 たとえば、まもなく中国を抜いて人口世界一の大国となるインドの最高学府デリー大学は、メータ副総長(総長は大統領)がわざわざ来日して、会長に名誉文学博士号を授与した。

 私たちデリー大学は、池田博士が「名誉文学博士号」の受章者であることを誇りに思います。
 私は、マキャベリの次の言葉を思い出します。〝名誉や団体のおかげで、輝く人もいる。しかし偉大な人物は、むしろ名誉や団体を輝かせる〟と。私たちの名誉博士号を受けてくださることにより、博士が人生の中で受けられた数えきれないほどの他の栄誉同様、池田博士は自身の輝きを、この名誉博士号に与えてくださったのです。
 これは、デリー大学の栄誉の受章者が、「私たちが栄誉を与える以上に、私たちに誉れを与えてくださる」という、まさに希有な例であります。

 さらに、会長はモスクワ大学、北京大学、ハーバード大学でそれぞれ2度の講演をおこなったのを含め、フランス学士院、ブラジル文学アカデミー、中国社会科学院、香港中文大学など、やはり各国の名門大学・学術機関から要請されて30回を超す講演をおこなっている。
 これらの講演が集中したのも1990年代であり、80年代末までは6つだった名誉学術称号もまた、90年代以降、加速度的に増えていく。
 冷戦崩壊後、世界秩序が混沌とするなかで、どれほど世界各国の知性たちが池田会長に注目し、その思想を受容しようとしたかの一端が明らかだと思う。

世界の教育界に与えた影響

 池田会長の「教育」に関する業績として見逃せないのは、こうした数十年にわたる世界の名門大学の碩学たちとの交流・対話を通して、彼らの側が会長から多大な影響を受けたということではないだろうか。
 世界の知性たちと編んだ多彩な対談集のなかにも、たとえばモスクワ大学サドーヴィニチィ総長との3冊を筆頭に、「教育」をメインテーマに据えた対談は少なくない。
 新しい世界を築くには、新しい人間の登場が不可欠である。その新しい人間を育むためには、新しい教育が必要だ。その新しい教育とは、いかなるものであるべきか。
 池田会長は飽くことなく、世界的な知の巨人たちを相手に対話を重ね、この問題に取り組み続けてきた。
 どの対談集を開いても、相手から学ぼうとし、相手のなかに真理を見出す会長の卓越した対話を通して、先方も新たな発見をし、時には会長の英知を自国の教育改革の実践に移していく様子さえうかがえるのである。
 世界に冠たる教育大国デンマークにあって教育界をリードしてきた重鎮ハンス・ヘニングセンは、会長との対談集の終盤でこう語っている。

 会長との対話は、私自身と、今日、私どもが抱えている学校や社会における諸問題、諸課題をめぐる私の思索に啓発を与え、多くのことを学ばせていただきました。
 2008年の1月20日、首都コペンハーゲンで、池田会長の80歳を祝賀して、私が会長を務める「アスコー池田平和研究会」で、「池田セミナー」を開催させていただきました。
 ここには、デンマーク・南大学のイーベン・イェンセン准教授、コペンハーゲン大学のジョン・エーベリ博士(デンマーク・バグウォッシュ会議議長)、南デンマーク大学のミカエル・アクター博士などが登壇し、会長の思想と行動への共感が述べられました。
 私もその一人として、池田会長の思想こそが人類が求めてやまぬ平和の哲学であり、参加した青年の皆さんが、池田思想の後継者として、思想を弘め、実践し抜いてくださいと訴えました。(『明日をつくる〝教育の聖業〟』潮出版社)

「宗教」と「教育」という両輪

 牧口常三郎と戸田城聖という2人の教育者の手で創立された創価教育学会。戦争に突入していく時代のなかで灯された教育改革の火は、やがて宗教改革の熱となって民衆に広がり、日本社会に〝民衆が主人公となる時代〟を開いてきた。
 池田会長は、恩師と先師から受け継いだこれらを、世界の最高峰の知性たちとの対話を通して、全人類が共有し合える普遍的な思想と運動へ発展・昇華させてきたといえるだろう。
 創価学会にあって「宗教」と「教育」は車の両輪のごとく、いずれも人間がいかなる逆境にあろうと〝自分自身で幸福を勝ち開くためのもの〟〝内なる善の力を開き、人格を完成させていくためのもの〟として、鍛え上げられてきた。
 そこに、世界の最高峰の知性たちは深い共感と信頼を寄せてきた。
 この70年間、休むことなく会長が蒔き続けてきた種は、今や地球上を包む新緑へと育ちつつある。やがて、この草木が満開の花を開き、無数の実を結び、新たな種を広げる時代が到来した時こそ、人類は池田大作という人がどれほどの労作業を成し遂げたのかを実感するに違いない。

「池田SGI会長70年の軌跡」シリーズ:
池田SGI会長70年の軌跡(上)――「民衆が世界を変える時代」開く
池田SGI会長70年の軌跡(中)――仏法の叡智を人類共有の宝に
池田SGI会長70年の軌跡(下)――新しい世界を開くための教育

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あおやま・しげと●東京都在住。雑誌や新聞紙への寄稿を中心に、ライターとして活動中。著書に『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』、『宗教は誰のものか』(ともに鳳書院)など。