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立憲民主党の欺瞞を問う――一度は理念を捨てた人々

ライター
松田 明

小池氏は「憲法」「安保」を明言

 残念ながら希望の党の理念や政策というものは、私がそして私たちが積み重ねてきた私たちの目指す理念や政策の方向性とは異なるものだと判断をせざるを得ません。
 政治家にとって、理念や政策は、何事にも変えがたい譲ってはならない筋であります。(10月2日 立憲民主党設立会見)

 立憲民主党の結党を発表した枝野幸男氏は、会見でこう語った。
 だが本当に彼らは「筋」を通してきたのか?
 民進党代表選挙がおこなわれ、新代表に選出された前原氏が「政治生命を賭けた党の再生」を誓ったのは9月1日のことである。このあと、枝野氏は幹事長に就任した。
 ところが、9月中旬の連休に解散風が吹き始める。
 9月25日、小池都知事が希望の党の立ち上げと代表就任を発表。
 すると翌26日夜、前原代表は小池代表と会談し、合流の可能性を探った。
 9月27日夜、小池知事はテレビ番組に出演し、民進党議員らの「入党の条件」について、明確にこう述べた。

 同党参加の条件について「基本的には憲法(改正)への対応。それは安全保障にも関わる」と述べ、改憲と安全保障に対する姿勢を重視する考えを示した。(朝日新聞/10月27日)

 さらに出演後、記者からの質問にも答え、

 極めてリアルな安全保障政策についてこれるかどうかということだと思います。(日テレNEWS24)

 記者から重ねて、リアルな安全保障政策というハードルでは左派系の民進党議員は難しくないかと問われると、小池知事は、

 そういう方はそもそも来られないのではないでしょうか。(同)

と、不敵な笑みを浮かべた。
 27日夜の時点で、希望の党への入党条件は、「憲法(改正)」であり「平和安全法制を容認すること」だと広く報道されていたのだ。

「満場一致」で合流を了承

 同じ27日、前原代表は民進党を事実上〝解党〟し、希望の党へ合流することを党内に提案している。
 その上で、翌9月28日、民進党は党本部で両院議員総会を開催。

 民進党は28日午後、党本部で両院議員総会を開き、来月の衆議院選挙で小池百合子東京都知事が代表を務める「希望の党」と合流する方針を満場一致で決めた。民進党の衆院議員は、離党したうえで希望の党に公認申請を行う。
(略)
 総会では特に強い異論や反対意見はなく、満場一致の拍手で提案が了承された。(ロイター/9月28日)

 前日に小池知事が入党の条件として、「憲法改正」「平和安全法制の容認」を明言し、それがのめない左派系議員の入党は困難であるとまでテレビで語っていたにもかかわらず、民進党の両院議員総会は「特に強い異論や反対意見」もなく「満場一致の拍手」で希望の党への合流を了承していたのである。
 小池氏率いる希望の党が登場し、このまま民進党に籍を置いたままでは落選すると戦々恐々としていた民進党議員たちは、数年来「改憲阻止!」「戦争法案廃案!」と拳を突き上げてきた姿をなかぐり捨て、満場一致で、沈む泥舟から小池人気にあやかる新党へと合流を決めたのだ。

賛成、そしてまた反対

 ところが29日、小池知事は民進党の左派系について「排除します」と明言する。
 あわてたのは、「排除」の対象となることを自覚していた議員たちだ。そして、3日後の10月2日、枝野氏が急ごしらえで立憲民主党を設立。
 希望の党への道をふさがれた民進党議員たちや、落選して浪人中の元民主党議員たちが、こぞってここに駆け込んだ。
 筋を通したどころか、一度は甘い夢を見て希望の党への合流を「満場一致の拍手」で了承しながら、排除されると知ったとたんに、ふたたび「戦争法案廃案!」に戻って日本共産党と手を組んだのが立憲民主党の人々ではないのか。

 きのうまでは民進党だったから平和安全法制に反対だったけれども、今朝、希望の党に公認申請したから、きょうから賛成ですと。公認をもらえなかった人は、また反対に戻すのですか。皆さんが米国高官だったら、そんな人たちを信頼できますか。そんな人たちを相手に日米同盟を結ぼうと思いますか?(河野太郎外相/10月10日/横浜市内の街頭演説)

枝野氏の憲法改正私案

 しかも日本共産党は、2013年に民主党(当時)の憲法総合調査会長に就任した枝野氏が、『文藝春秋』に「私案」として発表した憲法改正案を、機関紙『赤旗』で痛烈に非難してきた。

 その主張する改憲私案は、安倍首相と同様に、集団的自衛権行使と国連軍・多国籍軍への参加など、海外での武力行使を容認するものです。安倍首相が狙う集団的自衛権行使に向けた解釈改憲論へのけん制を装いながら、明文改憲を進めることは、議論の軸を右に持っていくだけです。(しんぶん赤旗/2013年9月10日)

 共産党が指摘したように、枝野氏自身が「護憲」でもなんでもない、改憲論者である。
 憲法についても安全保障についても、理念に大きな隔たりがあったはずの枝野氏と日本共産党。その枝野氏が率いる立憲民主党は、この総選挙で共産党と選挙協力して、いったいどのような日本を作るつもりなのか。

「民進党」復帰を呼びかける

 さて、希望の党が予想されたほど伸びそうにないという情勢報道が流れると、民進党の参議院会長が妙なことを言いはじめた。

 小川敏夫参院議員会長が11日、東京都内での街頭演説で「民進党は解党しない。民進党を守り、再びリベラル勢力を結集する」と語った。
 立憲民主党や無所属で出馬した民進党の前衆院議員らとの連携を目指す。小川氏は「やむを得ず希望の党に行った人もいるので戻ってもらい、大きな器となりたい」と述べ、希望の党に合流した議員にも「復帰」を呼びかけた。(毎日新聞/10月12日)

 選挙後に希望の党が仲間割れを起こすと見越したのか、希望の党で当選させたあと、ふたたび「民進党」に復帰させるというのだ。
 野党第一党でありながら国民の負託にこたえる政策論争ができず、自分の選挙が第一で、一夜にしていったんは理念も主張もかなぐり捨てた民進党の人々。
 渡りに船とばかりに飛び乗った者は希望の党で「平和安全法制賛成!」。乗り損ねた者は立憲民主党で「戦争法案廃案!」。
 そして、選挙が終わればまとめて元の「民進党」に戻せばいいという、耳を疑うような発想。
 もはや希望の党も立憲民主党も、「民進党」という不人気商品を隠す〝仮面〟でしかないことは明らかではないのか。

蘇る「民主党政権」の亡霊

 立憲民主党の代表は枝野幸男氏。最高顧問は、なんと菅直人氏。
 東京ブロック比例名簿の第1位は、民主党の代表まで務めながら前回の総選挙で落選した海江田万里氏だ。今回も東京1区から出馬しているが、当選する気がしないので比例の1位に重複しているのだろう。
 あの東日本大震災発災当時、菅氏が総理で枝野氏は官房長官。病院船機能を持った巡視艇が存在していることも知らず、放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を隠し、対応が後手後手に回って、被災地から「遅い! 鈍い! 心がない!」と無能ぶりを非難された民主党政権の面々。
 それが、看板だけを掛け替えて急ごしらえした政党が立憲民主党なのである。

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