都議選はなぜ「7月」になったか――躍進した公明党が金権撲滅に動く

ライター
松田 明

41道府県は4月の選挙

 7月2日に投開票を迎える東京都議会議員選挙。それにしても、首都とはいえ一地方議会選挙である都議選が、これほど早くから、しかも連日、マスメディアの注目を浴びて全国区の話題になっているのは異例である。
 ところで、通常、統一地方選挙は4月であり、47都道府県のうち41道府県は4月に議会選挙を行っている。例外は、東京都のほか、東日本大震災の影響で2013年4月の選挙が延期された岩手県、宮城県、福島県と、1966年12月に自主解散した茨城県、本土復帰した直後の1972年6月に選挙を行った沖縄県だけだ。
 一度ズレると、以後は任期満了が近づく4年後の同時期の選挙になる。
 東京都も1963年の選挙までは4月だった。では、なぜ東京都議会は、この半世紀、ほぼ毎回7月の選挙(01年と13年は6月下旬)になったのか。それは、都議会公明党と深い関係があるのだ。
 公明系の議員が地方議会に初めて誕生したのは1955年(昭和30年)4月の第3回統一地方選挙。このとき、東京都議会にも1人の議員が誕生した。
 続く第4回統一地方選挙(1959年)では都議会議員が3人に、さらに第5回(1963年)には一挙に17人が当選して「都議会公明会」(当時)を結成。これで会派として議会での質問権を得た。
 これがきっかけで、東京都政に激震が走るのである。

リコール運動で議会解散へ

 1950年代から60年代にかけての日本政治は、国政も地方政治も贈収賄などの腐敗が著しく横行していた。
 とりわけ55年に自由民主党と社会党による〝55年体制〟ができて以降は、議会では激しい論戦をしているように見せながら、夜な夜な与党が野党を接待して裏取引する「宴会政治」「国対政治」が常態化し、自民党総裁選などでも党内で札束が飛び交っていた。
 東京都議会も例にもれず、65年3月の議長選挙をめぐっては、当時の現職の都議会議長(自民党)までが贈賄容疑で逮捕され、計15人の自民党都議が訴追されるという、都政始まって以来の大スキャンダルが発生したのだった。
 公明党(当時は公明政治連盟)は、その名前が物語るように、こうした政界の悪習を打ち破り、政治を大衆の手に取り戻すことを目的に生まれた党である。
 魔物が棲むという意味の「伏魔殿」とまで呼ばれた都議会に対し、17人の陣容になっていた公明党は、金権腐敗の一掃を図るための臨時都議会と議会の自主解散を要求する党声明を発表した。
 自主解散とは議員の4分の3以上が出席し、その5分の4以上が賛成して議会が自主的に解散することだ。
 だが第1党の自民党、第2党の社会党とも応じようとしなかったため、公明党は4月24日に地方自治法に基づくリコール署名運動を開始。
 この公明党の動きは都民の大きな共感を呼び、その結果5月26日には各種市民団体や他党も参画して「リコール統一運動」に発展した。
 これによって5月30日の未明に臨時都議会で解散議決案が可決。6月の臨時都議会で「特例法」が可決されて都議会が解散。7月23日に都議会議員選挙が実施されるのである。

公明党案をベースに改革

 この65年7月の都議選で公明党は一気に23人の陣容に躍進。そして、この出直し選挙がきっかけで、その後の都議選は7月になってきたのだ。
 当時、どれほど地方議会で「宴会政治」が横行していたかは、たとえば63年度の大阪府企業局だけで年間600回もの「宴会」に公費が支出されていた。
 地方議会で公明党が躍進するにつれ、公明議員はいずれの議会でもこうした悪習の断絶を訴え始めた。他党議員から猛烈な罵声を浴びせられながら、公明党は世論の支持を喚起しつつ、粘り強く「宴会政治」の追放に取り組んでいった。これらの経緯は『公明党50年の歩み』(公明党史編纂委員会)に詳しい。
 近年、各地の地方議会で〝政治とカネ〟が問題になるなか、とくに昨年(2016年)は、富山市議会などで政治資金の不正受給が相次いで発覚し、地方議会のあり方があらためて大きな社会問題となった。
 この半世紀、〝都政から日本を変える〟挑戦と実績を重ねてきた都議会公明党は、昨年秋に独自の「都政改革推進プロジェクトチーム」を立ち上げ、首都・東京から改革する意味は大きいとして、議員報酬削減20%、政務活動費の削減と全面公開などの改革案を示した。
 反発する都議会自民党と袂(たもと)を分かってでも、この独自改革案を推進した結果、本年(2017年)2月、ついに都議会が全会一致して公明党案を全面的に反映した改革案を可決したことは既報(前掲コラム)のとおりである。
 かつて公明党が腐敗一掃に立ち上がったことがきっかけで、〝7月の選挙〟となってきた東京都議会。
 都議会公明党は脈々と受け継がれてきた不正と戦うDNAを掲げて、都政の刷新と安定に健闘してもらいたい。

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