活気ある温かな地域づくりを目指して

衆議院議員
石井啓一

 結党50周年を迎えた公明党が掲げる「女性の活躍を支援」や「地方創生」などの提言について党政務調査会長の石井衆議院議員に話を聞いた。

超高齢社会にどう向き合うか

 学識者らでつくる政策シンクタンク「日本創成会議」がまとめたレポートでは、今後2040年までに20代から30代の女性人口が半減してしまう市区町村が、全体の約半数の896にもおよび、そのうちの523自治体が、人口1万人を下回るとの厳しい予測が示されています。
 地域の担い手である現役世代が減少する一方、高齢世代の人口は増え続けていきます。とりわけ25年には、団塊の世代と呼ばれる人々が軒並み75歳を迎え、従来型の社会保障制度で高齢者の医療や暮らしを支えていくことは難しくなります。
 施設や医療介護従事者が絶対的に不足する厳しい現実を見すえながら、高齢者の介護・看護や生活支援まで含めてトータルに設計していくためには、地域の中で高齢者を支えていく「地域包括ケアシステム」の構築が急務となります。
 たとえば、自動車運転免許の返上によって「買い物難民」に陥ってしまった高齢者の暮らしをいかに支えていくのか。地域の実情を踏まえ、自治会・商店街・NPOなど多様な民間活力を地域社会の中にどう取り込んでいくかを考える必要があります。
 また、地域の活力を引き出していくためには、未来ある若者や豊かな感性をもった女性の社会参加を促し、地域社会の主役に位置づけていく必要があります。
 そこで公明党では、「支え合う地域づくり」「魅力ある地域づくり」「安心な地域づくり」「活力ある地域づくり」との4つの柱を中心に「活気ある温かな地域づくりを目指して」と題する政策提言をまとめ、地方創生の新たな展望を示したのです。

女性が輝く町づくりを

 今回の提言には、「女性の元気応援プラン」全文PDF[約500KB])が盛り込まれています。本年2月から4月にかけて、わが党の女性議員約900人が、全国303団体の有識者へのヒアリングをもとに策定した同プランでは、女性の活躍を支援していくための4つの視点が反映されています。
 プランの1つ目は、あらゆる産業分野へ女性の進出を促していくために、政府に「女性の活躍加速化推進本部」を設置し、首相主導で働く女性の支援に取り組んでいくことです。政府はすでに公明党の要望にそった形で「すべての女性が輝く社会づくり本部」を設置し、女性の登用に積極的な企業への優遇措置を講じることなどを決定しています。
 2つ目は、子育てや家族の介護に携わる女性の学び直しを推進し、職場復帰を後押ししていくことです。時間や場所を選ばない「テレワーク」業務の拡大や、女性起業家の育成に取り組むとともに、待機児童解消の加速化や学童保育施設の拡充に力を尽くしていきます。
 3つ目は女性の健康を守ることです。産後ケアの充実や母子保健対策などを進め、子育てに励む女性が地域の中で孤立しないよう着実な取り組みを進めていきます。
 4つ目は女性の安心・安全を守る施策です。DV(家庭内暴力)、ストーカー、性犯罪など女性を苦しめる現実に向き合い、犯罪被害に遭われた方々に新居の支援を行うなど、きめ細かな取り組みを提言しています。
 人々の暮らしを守るためには防災・減災に関する取り組みも大切です。安心の地域づくりを進めていくためには、ハード面での整備とともに、日ごろから住民が精度の高い災害情報に接し、いざという時に的確な避難行動につなげられるよう「災害リスクコミュニケーション」の充実をはかる必要があります。
 この夏の広島土砂災害では、警戒区域指定と避難勧告の遅れの問題が明らかになりました。
 現在の土砂災害防止法では、住民の危険が想定される地域を都道府県知事が事前に調査し、「警戒区域」と「特別警戒区域」に指定できることになっています。指定にあたっては、必ずしも住民の同意を得なければならないわけではあ
りません。しかし実態は、区域指定による周辺地価の下落などを理由に、住民理解に時間がかかり、調査を実施しながらも指定には至っていない現実があります。
 こうした状況を踏まえ、政府与党では土砂災害防止法の改正案を今国会に提出し、都道府県知事に調査結果の公表を義務づけることを目指しています。住民感情に配慮して警戒区域の指定には至らずとも、早め早めに情報を公開することで、自分たちが暮らす地域がどのような場所かを住民に伝え、いざという時の判断材料にしてもらうのです。
 普段から正しい情報に接し、災害への心構えを身につけておけば、行政の避難勧告指示よりもいち早く自主避難できるはずです。

議員3000人のネットワーク

 厳しい財政状況のもとでさまざまな社会保障を進めていくためには、政策の財源となる消費税増税など税制の問題を避けて通ることはできません。
 これまで公明党は、消費税率10%引き上げ時の軽減税率導入をねばり強く主張してきました。飲食料品などの税率を緩和することで、国民の皆さまの理解を得るとともに、経済的に苦しい状況にある方々の暮らしを守ろうと考えています。今後も軽減税率導入実現に努力を重ねていきます。
 本年(2014年)、公明党は結党50周年(11月17日)を迎えました。地方議会から出発した私たちは、党員・支持者の皆さまに支えられ、現在では地域社会を支える議員のネットワークを全国3000人にまで広げています。
 魅力ある地域づくりを進めていくためには、住民の意思をくみ上げる地方議員の存在が不可欠です。それぞれの地域の取り組みや成功事例を情報共有し、人的交流を重ねることができれば、日本社会全体の活性化につなげていけるはずです。
 すでに公明党本部では、政務調査会に「活気ある温かな地域づくり推進本部」を設置し、国会議員と地方議員が力を合わせて地域の問題に取り組みはじめています。地方創生をリードし、活力ある日本社会を実現するためにも、まずは明年の統一地方選に勝利し、党員・支持者の皆さまのご期待に応えていく決意です。


いしい・けいいち●1958年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業。建設省勤務を経て、93年、衆議院議員総選挙で初当選。現在、公明党政務調査会長。