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平和に向けた政策提言活動を続ける――命を見つめる視点忘れない

日本リザルツ代表
白須紀子

飢餓と貧困の根絶を

 私たちリザルツは、アドボカシー活動(特定の政策を実現するために社会的な働きかけをすること)を行っている国際市民グループ(NGO)です。私たちの活動の目指すところは、民意の反映された国際援助を実現し、いまだ世界に存在する飢餓と貧困の根絶を最優先とする〝政治的意思〟の確立です。
 貧困、環境、紛争といった地球規模の課題に対して、私たち一般市民が日常生活の中でどのような貢献的な活動ができるのか。そのようなことを考えた時、問題意識はあったとしても日本に住んで一般的な市民生活を送りながらできることというのは、あまりないように感じる人が多いかもしれません。
 しかし、私たちが行っているアドボカシー活動は、非常に有効な国際貢献の手段に成り得ます。これは等身大の市民の立場で地球規模の課題を考え、国会議員や官庁、マスメディアへと直接提案をしていく活動です。現在、リザルツではこのアドボカシー活動を通して、世界各国で貧困問題に取り組んでいます。
 1985年に米国で設立され、日本リザルツとしては89年に発足しました。発足以来、「飢餓と貧困のない世界を創ろう」という市民の声を政治、メディアへと届け、具体的な方針を提示しながら成果を上げてきています。また、日本国内だけの活動ではなく、世界銀行や国際開発機関に向けても、世界的なネットワークを通じて、政策提言を行っています。

1人ひとりに世界を変えていく力がある

 私自身がボランティアを始めたのは、1991年に骨髄移植推進財団(骨髄バンク)が設立され、その事務局の第1号ボランティアとなったのがきっかけでした。それまでの私は3食昼寝付きのどこにでもいる普通の〝おばさん〟でした。自由に使える時間があったことから骨髄バンクを訪れ「何かお手伝いできることはありませんか」と申し出て、事務局での電話の対応や宛名書き、街頭でのドナー登録の呼びかけといった、ごく普通のボランティア活動をしていたのです。
 骨髄バンクで活動を始めて10年後の2001年1月、娘の大学の先輩が26歳の若さで白血病で亡くなってしまいました。未来ある若者の不幸な出来事に触れ、街頭活動をしているだけでは、多くの患者さんを救えないと考えるようになったのです。そんな思いで参加した骨髄バンクの公開フォーラムの場で、私は勇気を振り絞って手を挙げ、用意していた原稿を震えながら読み上げました。
「30万人ドナー登録早期達成のために、責任官庁である厚生労働省が率先して省内で登録会を開き、主体的に取り組む姿勢を示すことが重要ではないでしょうか」と。
 驚いたことに、その後すぐに厚生労働省内で献血と併行してドナー登録会が開かれることになりました。
 私はこの時に「何か疑問に感じたり不都合があったりしたら、それを伝えることによって世の中が変わるんだ」ということを経験しました。
 そしてこの教訓は、その後出会ったリザルツの「私たち1人ひとりに世界を変えていく力がある」との理念と同じものでした。そこから現在の活動へとつながっていったのです。
 私はリザルツでの活動を通して、〝政策を動かすには人の心を動かすこと〟〝専門家しか分からない言葉を使うよりも、誰でも分かる簡単な言葉で訴えることが大切だ〟ということを学びました。

小さな力の積み重ねが平和につながっていく

 2013年、日本では東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、来る平和の祭典に向けて、多くの人たちが身体的・精神的な可能性を見いだし、日本中が盛り上がりを見せました。しかし、その一方で、地球上には毎日を平穏に生きることさえ許されない子どもや女性たちが存在していることを、私たちは忘れてはいけないと思います。
 日本国内では、東日本大震災から3年近くが経ち、被さい地の復興は進んでいるとはいえ、まだまだ大変な中で生活をしている人がたくさんいます。
 アフリカの地に目を向ければ、いまだ乳幼児の死亡率は高いままです。また昨年はフィリピンで猛威を奮った台風ハイエンがありました。私は、最も被害を受けた地域の1つであるレイテ島に3回行きましたが、そこでは家が流され、食料も水もなかなか届かないといった状態でした。まさに人間の安全保障そのものが脅かされていたのです。そうした困っている人や死んでいく子どもたちのことを基本に考えていかなければ、本当の世界の平和を築いていくことはできません。
 私たち日本リザルツは小さなNGOですし、個人や1つの団体だけでは小さな力でしかないかもしれません。しかし、多くの人や団体と連携し、ネットワークを拡大していくことで困難な問題を解決へと導く大きな力になっていきます。世界の平和といっても本当に苦しんでいる人に寄り添っていく、1つひとつの行動こそが大事なのです。
 そして子どもたちが豊かな心で安心して生きられる。そのことでお母さんも家族も喜んで暮らせる。そのような、ささやかなことの積み重ねが、世界の平和へとつながっていくのだと私は思います。
 その意味で、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長が示されている〝お母さんこそ幸福博士〟という理念は、まさに平和な世の中を築く核心であると思います。また、平和を志向する創価学会の活動にも大いに共感しています。

人間の安全保障の重要性

 2014年に入って安倍晋三首相は今年初の外遊先として中東・アフリカを訪れました。日本の首相のアフリカ訪問は安倍首相で3人目となりますが、前回が2006年の小泉首相の時でしたので、実に8年ぶりとなるアフリカ訪問となりました。
 今回のアフリカ訪問は公明党議員の国会質問が契機となりました。公明党には谷合正明参議院議員や石川博崇参議院議員など、国際協力に知見の高い議員の方がおられます。
 昨年開催されたTICAD(アフリカ開発会議)の開会式で安倍首相はアフリカ支援を表明しました。谷合議員は、アフリカの支援をするのであれば、実際に現地を訪問するべきだと国会で質問しています。
 そして実現したアフリカ訪問でしたが、私は経済外交が前面に出ている印象を受けました。たしかに経済面での支援も重要であることは間違いありません。しかし、そこに抜け落ちてしまっていると感じるのは、命の問題、つまり人間の安全保障の観点です。
 その点では公明党の存在はとても重要だと思っています。
 昨年、公明党の山口那津男代表が訪米した際、ワシントン市内の世界銀行本部で、ジム・ヨン・キム総裁と会談(外部サイト)されています。
 キム総裁はそこで「公明党の政策の根底にはヒューマニズム(人道主義)がある。私も人道支援に長年携わってきたので、公明党の哲学や政策に大変関心があるし、共感している」と語り、続けて「アベノミクスに公明党のヒューマニズムを混ぜてもらえればいいのではないか」と非常に的を射た提言をされました。
 私もこの見解に大いに賛成です。真に平和な世の中をつくっていくために、日本が貢献できることは経済だけではないはずです。
 公明党のベースにある人道的視点、命を見つめる視点こそ平和に欠かせない理念であると確信しています。

<月刊誌『第三文明』2014年3月号より転載>


しらす・のりこ●1948年東京都生まれ。NPO法人・日本リザルツ代表。1991年12月、「骨髄移植推進財団(骨髄バンク)」のボランティアに。骨髄バンクの普及、啓発活動などを精力的に展開。2001年には「骨髄移植を必要とする患者関係者有志」の発足に携わり、30万人ドナー登録の早期達成、医療保険適用、政府補助金の増額、寄付要請などを各方面に働きかける。06年から日本リザルツでもボランティアを開始。07年からはエグゼクティブ・ディレクター(代表)としてマイクロクレジットの普及、ワクチン支援、結核感染問題などに取り組んでいる。ストップ結核パートナーシップ日本、国際連帯税フォーラム代表理事。NGO 特定非営利活動法人 日本リザルツ(RESULTS Japan)