沖縄県知事選のゆくえ③——すっかり変貌した「オール沖縄」

ライター
松田 明

翁長県政が誕生した経緯

 前回2014年の県知事選で、現職の仲井眞弘多氏を破って当選した翁長雄志氏は、前那覇市長。それ以前は自民党の那覇市議、沖縄県議を務め、県連幹事長でもあった。
 2013年12月、当時の仲井眞知事がそれまでの「辺野古への移設反対」の姿勢を転換。普天間飛行場の危険性を取り除くことを優先し、政府からの沖縄振興策を取りつけ、名護市辺野古の埋め立てを承認した。
 このことで今度は県内の自民党や保守層が分裂することになった。
 14年11月の知事選では、それまで仲井眞知事を支援してきた公明党沖縄県本部も自主投票を表明。
 自民党から分裂した会派、共産党、社民党、生活の党(当時)、沖縄社会大衆党など、従来の保革の枠組みを超えた「オール沖縄」の支持を受けた翁長氏が、仲井眞氏や他の候補を大差で破って当選を果たした。
 過重な基地負担に反対する多くの県民の思いが、従来の〝保革〟対立を乗り越える形で新しい知事を誕生させたところまでは、ある意味で理想的にも思われた。
 だが〝保革〟の対立を超えて誕生したはずの翁長県政は、ここから一気に国との法廷闘争に入るなど対立を深め、さらに県内の市長選などのたびに、沖縄の人々の中にも新たな対立と分断を生み出してしまった。
 なぜ、そのような不毛な展開にしか進めなかったのか。

「対立」仕掛けた政党

 翁長県政の〝与党〟として、この「分断」「対立」「対決」を戦略的に主導してけしかけ続けたのが、日本共産党だったのである。
 翁長氏が当選した夜、共産党の志位委員長は会見で次のように述べた。

 この結果は、県民の意思を踏みつけにし、強権をもって、新基地建設を強行しようとしている安倍政権への痛烈な審判です。(しんぶん赤旗/2014年11月17日)

 来るべき総選挙では、この結果を受けて、沖縄新基地建設問題が大きな争点の一つとなります。(同)

 政府と新知事が何らかの合意形成を模索する回路を即座に断ち、国と沖縄県が最初から決定的な「分断」「対決」の構図に陥ること。
 翁長氏を支援した共産党にとって、それこそ党勢拡大に好都合という思惑が透けて見える。

〝大きな争点〟で不安煽る

 口では「みんなで手を取り合って」と言いつつ、社会を分断し対立させていくのは、日本共産党の常套手段である。
 その有権者を分断する手法として、選挙のたびに「憲法」「原発」「基地」といったような〝大きな争点〟をあえて設定し、不安を煽り立てる。
 たとえば今年2月の名護市長選挙でも、告示前日のしんぶん赤旗はこんなふうにアジテートした。

「名護市民とオール沖縄」対「日米政権と基地推進派」の構図で、両陣営が総力をかけて1票を争う、かつてない大激戦、大接戦となっています。(しんぶん赤旗/2018年1月27日)

 もちろん沖縄県にとって基地の問題はきわめて重要であり、この名護市の場合は辺野古を抱えた当事者ですらある。
 しかし同時に、そこにも人々のあたりまえの暮らしは存在し、実際に世論調査をしても、経済、雇用、医療、福祉、教育など、有権者が政治に求めている課題は多様なのだ。
 それを無視して、地方自治の首長選の争点を〝辺野古移設問題〟だけに極端に単純化し、有権者である名護市の人々を「市民」と「基地推進派」という独善的なレッテル貼りで分断していく悪質さ。
 共産党が支えた稲嶺市長による2期8年の名護市政の停滞にうんざりしていた有権者は、自民党・公明党・維新の推す新人候補を新しい市長に選んだ。
 敗れた稲嶺陣営は「争点を外された」と語ったが、むしろ本来の多様な争点から有権者の目をそらさせたからこそ敗れたのである。

分断だけを残し破綻する

 とくに翁長県政が誕生した2014年からは、沖縄でも中央政界でも、共産党が同じ手法で、社会の分断と対立を演出し続けてきた。
 中央政界でも〝野党共闘〟という共産党の甘言に乗せられた政党は、瞬間的にボルテージを上げたものの、結局、参院選でも都知事選でも衆院選でも連敗。共産党と共闘し続けることへの不満から、民進党は崩壊した。
 沖縄ではどうだったか。
 先述のしんぶん赤旗に明らかなように、「オール沖縄」は早々に共産党に主導され、名前とは裏腹に、沖縄社会を分断し、沖縄県民同士を敵対させていく枠組みに変質した。当初は参加していた企業人なども嫌気がさして抜けていった。
 ひたすら人々の不安と憎悪を煽り立てて地域社会を引き裂き、〝対立のための対立〟という無価値な泥沼に引きずり込んでいくだけの政治手法。
 ここにきて宜野湾、宮古、浦添、うるま、名護と、県内の主要な市長選で「オール沖縄」の候補が連敗していることは、共産党率いる「オール沖縄」の欺瞞と限界に、人々が気づきはじめた証左だろう。
 人間の素朴な良心や善意、正義感さえ、憎悪や対立といった〝負〟の情念に変質させて、煽り立て、それを党勢拡大のエネルギーにしようとする政党。
 共産党に食い込まれたところは、停滞し、分断だけを残し、破綻していく。

「沖縄県知事選のゆくえ」シリーズ:
沖縄県知事選のゆくえ①――県民の思いはどう動くか
沖縄県知事選のゆくえ②――立憲民主党の罪深さ
沖縄県知事選のゆくえ③――すっかり変貌した「オール沖縄」
沖縄県知事選のゆくえ④――「基地問題」を利用してきた人々
沖縄県知事選のゆくえ⑤――「対話」の能力があるのは誰なのか
沖縄県知事選のゆくえ⑥——なぜか180度変わった防衛政策

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