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沖縄県知事選のゆくえ①——県民の思いはどう動くか

ライター
松田 明

対立や分断から無縁な沖縄を

 沖縄県知事選挙が9月30日におこなわれる(9月13日告示)。本来は11月18日の投開票予定だったが、翁長雄志知事の急逝を受けて早まった。
 すでに前宜野湾市長の佐喜真淳(さきま・あつし)氏が自民党、公明党の推薦を受けて立候補を表明。日本維新の会も佐喜真氏を推薦する見込みと報じられている。
 一方、共産党など「オール沖縄」側では候補者として浮上する名前が二転三転していたが、8月29日になって自由党幹事長の玉城デニー氏が正式に出馬表明をした。
 玉城氏は出馬表明に先立って、立憲民主党の枝野代表、国民民主党の大塚代表、共産党の志位委員長、無所属の会の岡田代表、社民党の又市党首と個別会談。協力への要請を取りつけた。事実上、佐喜真候補と玉城候補の〝一騎打ち〟になる見通しだ。
 玉城氏の訪問を受け支援要請された共産党の志位委員長は、

 辺野古に新基地をつくらせない「オール沖縄」の代表として最良の政治家です。出馬となれば、わが党は「オール沖縄」の一翼、市民と野党の共闘の一翼を担い、勝利のために全力を尽くします。(しんぶん赤旗/8月29日)

と歓迎。基地問題に争点を集中させて、選挙戦を進めたい意向を強く示した。
 これに対し佐喜真候補は、8月14日の立候補表明の場で、この4年間の沖縄県政について、

 国との関係などにおいて争いが絶えず、ひずみや分断が生まれてしまったことも事実だ。(琉球新報/8月14日)

と指摘。

「元気で明るい、対立や分断から無縁な沖縄を取り戻すために全身全霊をかける」と決意を語り、「県民所得の向上など沖縄の発展に向けた県土づくり、沖縄の未来づくりが争点になる」とした。(同)

露呈した政策のチグハグさ

 玉城氏は米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する勢力が支援する。立憲民主党などの野党共闘は来年夏の参院選への試金石となる。(日本経済新聞/8月29日WEB版)

 共産党の志位委員長が玉城氏の支援要請の場で「市民と野党の共闘の一翼」を口にしたのは、この来年夏の参院選で、再度の「野党共闘」に弾みをつけたいからだろう。
 2015年以来、共産党が主導してきた「野党共闘」は参院選、都知事選、2つの補選、衆院選とすべて連敗。国家観も憲法観も異なる共産党が、現実味のない〝国民連合政府〟構想を持ちかけ、民進党を大分裂させる結果となった。
 今回の県知事選でも、こうした政策のチグハグさがすでに露呈している。
 たとえば沖縄の基地問題の根幹でもある日米同盟についてだ。共産党は一貫して、日本政府の立場を〝日米同盟第一〟だとして強く批判し撤回を求めてきた。
 だが玉城デニー候補は29日の会見で、

 私はかねて中道保守の立場から、日米同盟を容認するスタンス」とも強調した。(同)

としている。
 また、8月20日に出演したラジオ番組でも、

 自由党はオール沖縄の中では、保守政党であり、中道の役割だとずっと言ってきた。安全保障や自衛隊の考え方についても、私たちは保守的な考えを持っている。(朝日新聞/8月20日)

と述べている。
 さらに玉城氏は沖縄県防衛協会「顧問」に名を連ねている。同協会は、

 沖縄県民の自衛隊に対する理解を深め、防衛思想の普及啓蒙、自衛隊との親睦を図るなどして、新生沖縄の発展と県民福祉の増進に寄与することを目的とする。

という組織だ。
 日米安保や自衛隊の解消を訴える共産党や社民党が、これらを肯定し推進する政治家を次の沖縄県知事に担ぎ上げるというのは、沖縄県民でなくても首を傾げる話ではないか。

県民は「基地」よりも「所得」「教育」

 沖縄の本土復帰45周年となった2017年、沖縄タイムス社、朝日新聞社、琉球朝日放送が共同で「県民意識調査」を実施した。(沖縄タイムス+プラス)

 本土と沖縄のあいだに「さまざまな格差」があると回答した人は、全体の81%にのぼった。
 ただし、「一番の問題」と思う格差は「所得」が43%で1位。30代に限れば「所得」と答えた人が58%と全世代でもっとも多く、18~29歳でも47%を占めた。
「基地問題」と回答した人は全世代を平均しても10ポイント低い33%で、18~29歳では「教育」の24%よりもさらに低い21%にとどまっている。
 一番の問題を「基地問題」としたのは60代と70代以上で、70代以上では49%と最多になった。
 もちろん、「基地問題」は多くの沖縄県民にとって重要な課題ではあるが、10代から30代の若い世代の県民にとって、なにより政治に望む課題は「所得」であり「教育」なのだ。
 この数字は、この4年間の「オール沖縄」を与党とする県政が、基地問題だけに固執して地域社会を分断し、国と法廷闘争するまで対立しながら、経済や教育の振興をおろそかにしてきた結果ともいえるだろう。

「沖縄県知事選のゆくえ」シリーズ:
沖縄県知事選のゆくえ①――県民の思いはどう動くか
沖縄県知事選のゆくえ②――立憲民主党の罪深さ
沖縄県知事選のゆくえ③――すっかり変貌した「オール沖縄」
沖縄県知事選のゆくえ④――「基地問題」を利用してきた人々
沖縄県知事選のゆくえ⑤――「対話」の能力があるのは誰なのか
沖縄県知事選のゆくえ⑥——なぜか180度変わった防衛政策

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