第196通常国会を振り返って――〝嫌がらせ〟に終始しただけの野党

ライター
松田 明

免職を含む懲罰制度

 第196通常国会が7月22日に閉会した。1月22日の召集から、会期延長を含んで182日間の長丁場となった。
 この間、財務省の決裁文書書き換えなど重大な不祥事が発覚し、安倍首相は20日の記者会見で「行政をめぐるさまざまな問題が起こった。行政のトップとして深くお詫びする」と陳謝した。
 政府は20日午前、「行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議」を官邸で開き、不正行為が刑法上の罰則にあたらない場合でも、免職を含む懲戒処分の対象にするなど再発防止策をまとめた。
 これは、自民党・公明党の公文書管理の改革に関するワーキングチームが政府に申し入れた提言を反映したものだ。
 一方、会期終盤には西日本で大規模な「平成30年7月豪雨」が発生。200人を超す死者・行方不明者が出る、平成における最悪の豪雨災害となった。
 7月21日に広島県の被災地を視察した安倍首相は、24日の閣議で今回の豪雨災害を「激甚災害」に指定することを言明。公立でない学校の災害復旧なども国として支援することや、勤務先の被災によって休業を余儀なくされている人々も離職者とみなして手当てを受けられるようにすると述べた。
 例年にない連日の酷暑は豪雨被災地を疲弊させており、被災した方々の生活再建に政府・与党は全力を挙げてもらいたい。

際立った野党の迷走

 今国会で何よりも残念だったのは、パフォーマンスに終始した感のある野党の異常な姿だ。
 4月から5月にかけて、立憲民主党など野党6党は、18日間も国会審議をボイコットするという戦術をとった。
 口では「安倍内閣を追及する」と叫びながら、首相や閣僚が出席する国会審議には出席せず、別室にテレビカメラを招いて答弁権限のない財務省の役人を呼びつけて責め立てるという〝政治ショー〟を連日繰り広げたのだ。
 また、豪雨被災地ではまだ行方不明者の捜索が続いているなかで、統合型リゾート整備法案の審議を少しでも遅らせたいだけのために、否決されることを百も承知で、石井国土交通相に対する不信任案を連発。
 山口公明党代表は20日の党両院議員総会で、

「国交相は災害対応に当たるべき」と主張しながら、被災者に安心感を届ける取り組みを妨害する野党の対応は、言っていることと、やっていることが違うと言わざるを得ない。(公明新聞/7月21日付)

と批判した。

「一番嫌な時に出す」

 じつは事実上の国会閉幕にあたる7月20日午前には、「平成30年特定災害関連義援金に係る差押等に関する法律案」の参議院採決が予定されていた。
 被災者に支給される義援金が、住宅ローンなどの借金があった場合に金融機関に差し押さえられることを防ぐための、被災者の死活にかかわる法案である。
 しかし、立憲民主党などはこの採決を待たずに、これまた否決されることを承知の上で内閣不信任決議案を提出。立憲民主党の枝野代表は2時間超の趣旨説明演説を長々とおこなった。
 このタイミングについては、立憲民主党の辻本清美・国対委員長が7月5日の党会合で内閣不信任案の提出を示唆し、

 一番嫌な時に出さないと気が済まない。(「産経ニュース」7月5日)

と述べていたことも付記しておきたい。
 また、自由党の山本太郎議員、森ゆうこ議員、沖縄の風の糸数慶子議員の3人は、議長の制止を無視して壇上で「カジノより被災者を助けて」と書かれた垂れ幕を掲げるパフォーマンスを強行し、懲罰委員会に付託された。
 彼らは口を開けば「数の力で強行採決することは許されない」と言う。それならば、正攻法で国会での議論をやるべきで、いたずらに日程を消化させるための審議拒否など言語道断だろう。
 国民の多数が、彼らのやっているパフォーマンス的な政治、否決されることを承知で繰り返す〝審議妨害〟〝嫌がらせ〟のためだけの不信任案などをまったく支持していないことは、野党6党などの支持率が低迷したままであることに明らかだ。
 国会の会期延長にあれだけ異を唱えていた枝野代表は、国会が閉幕するや、今度は臨時国会の早期開会を求めている。

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