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名護市長選が示したもの――「分断」「憎悪」の政治ではなく

ライター
松田 明

不可解な〝敗戦の弁〟

 沖縄県名護市の市長選挙(2月4日投開票)の結果が出た。
 投票率は76.92%。前市議で新人の渡具知武豊氏(自民、公明、維新が推薦)が20389票を獲得し、現職の稲嶺進氏(民進、共産、自由、社民、社大が推薦、立憲が支持)を約3400票差で破って当選した。
 今回の選挙は、米軍普天間飛行場移設計画の是非や、本年秋の県知事選挙の前哨戦として注視され、両陣営とも党首クラスや大物議員が連日入る熾烈な選挙戦となった。
 前回選挙では自主投票に回った公明と維新も、今回は渡具知候補を推薦した。
 現職市長の稲嶺候補は「基地問題」を争点にし、市長権限で建設阻止することを主張。
対する渡具知候補は、移設問題は国と県との裁判の結果にゆだねるとし、2期の稲嶺市政は「(移設という)一つの問題にこだわり過ぎた」と、市政のさまざまな停滞を批判。国との協調路線を打ち出し、名護市の変革を訴えた。
 敗れた稲嶺候補は、

 敗因については「残念ながら辺野古移設問題が争点となり得ず、はぐらかされてしまった」と振り返った。(産経新聞/2月5日)

と語り、連日、稲嶺候補の支援に走ってきた翁長知事もまた、

 結果について翁長知事は「争点はずしをされたというのは残念だった。厳しい結果。これからいろいろ相談をしながら、やっていきたい」と述べた。(朝日新聞/2月5日)

と報じられている。

有権者を愚弄するのは誰か

 この「争点はずし」が敗因という主張は、SNS上などでも〝反アベ〟の著名人などから相次いだ。
 しかし、これは有権者である名護市民に対して、ずいぶん失礼な目線ではないのか。
 これは渡具知陣営と、その先に彼らが見ているのだろう与党を非難しているようで、要するに有権者の多くが「争点」を理解できなかったから自分たちが敗れたと言っているわけである。
 自分たちを「争点」を理解している賢明な〝市民〟という高みに置き、異なる選択をした有権者を愚民視するという態度は、これまでにもよく見られた光景だが、いかがなものかと思う。
 政治が担う課題は、現実にはじつに多様だ。世代ごとにとっても求めているものは異なる。
 そうした現実に対し、たとえば先般の東京都議選に憲法問題を持ち出すなど、常に〝大きな争点〟を無理やりに設定し、有権者を分断する戦略を推し進めてきたのが日本共産党に代表される野党勢力ではなかったか。
 今回の市長選でも稲嶺陣営を強烈に支援してきたのは共産党だ。
 告示日前日の「しんぶん赤旗」は、

「名護市民とオール沖縄」対「日米政権と基地推進派」の構図で、両陣営が総力をかけて1票を争う、かつてない大激戦、大接戦となっています。(1月27日)

と危機感を煽っている。
 相手陣営に投票するような市民は、もはや「名護市民」ではなく「基地推進派」だとレッテル貼りをし、この市長選が「日米政権」との対決だと煽り立てているのだ。

投票に見る世代間の差違

 実際に名護市民がどのような投票行動を示したかを見ると、非常に興味深い数字が出ている。
 各メディアの調査では、押しなべて10代から50代の世代の過半数が渡具知候補に投票し、60代以上の世代ではガラリと逆転して稲嶺候補の支持が強くなっているのだ。
 つまり、現役世代とこれからの世代は現市政の停滞に危機感を抱き、年金受給世代とは異なる選択をしたことになる。
 これは、ここ数年の国政選挙でも顕著な、若い世代ほど与党を支持し、高齢世代ほど野党を支持する現象と重なる結果だ。
 いずれの選挙でも若い世代ほど、共産党などが設定するイデオロギー的でワンイシュー(一つの問題)の争点に流されず、現実の多様な政策遂行能力を持つ政党や候補者を見極めようとしている。
 また共産党など野党が「政府との対決」を演出し、不信と憎悪を煽って有権者を分断しようとするのに対し、「国との協調」路線を掲げた側が勝利したことも、ここ数年の国政選挙での有権者の判断に重なるといえる。
 時代は着実に変化しており、人々は不安や憎悪で政治を動かそうとするポピュリズムを警戒し、複雑な意見のなかで合意形成できる政治を望んでいるのだ。

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