迷走する蓮舫民進党の〝脱原発〟――「民進党大会」から見えてきたもの(下)

ライター
松田 明

党大会で工程表を示すはずが

 時代遅れの「二大政党制」を掲げながら、理念も政策も示しきれないままの民進党。
 初の党大会で、蓮舫代表は安倍政権との違いを見せようと「脱原発」を訴えてみせた。

 原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向け「原発ゼロ基本法案」を立案し、国会に提出します。
 再稼働まっしぐら、原発依存へ逆戻りの現政権とは違う未来を描いていきましょう。(民進党HP「【定期党大会】蓮舫代表あいさつ」より)

 ところが、この目玉にしたかった「脱原発」をめぐっても、じつは民進党は党内の意見がまとまらないまま党大会を迎えたのだ。
 2月9日の記者会見の時点で蓮舫代表は、

 昨年の代表選の公約でも、私は原子力政策・エネルギー政策においては工程表を明らかにすると公約をしました。(民進党HP「蓮舫代表記者会見2017年2月9日(木)」より)

と述べ、その「脱原発」の具体的な工程表を示す時期については、

 党大会までに総選挙がなければ、という前提ですが、その部分でのゴールは党大会かなと思っています。(同)

と明言している。

「2030年原発ゼロ」を撤回

 ところが蓮舫代表が従来の「2030年代に原発ゼロ」から踏み込んで「2030年原発ゼロ年」を打ち出そうとしていることに、党内や支持団体の連合から猛反発が起きたのだ。

「なぜ党が割れるようなことをするのか!」。22日の党エネルギー環境調査会で、電力総連出身の小林正夫参院議員は蓮舫氏への不信感を隠さなかった。(「産経ニュース」2月23日)

 そもそもが、東日本大震災のあと稼働中の原発がゼロだった中で、2012年6月、大飯原発の再稼働に踏み切ったのは、今の民進党幹事長である当時の野田総理だ。
 民進党の最大支持母体・連合も、共産党が主張するような〝即時原発ゼロ〟など、あまりにも非現実的だと否定している。
 2月17日の蓮舫代表と電力総連との会合でも、蓮舫氏の主張があまりにも現実離れしていることに批判が出た。

 電力総連側は、「組合員がポスター貼りに行っても『民進党は駄目』といわれる。そこをはいつくばって努力している」とも指摘。「エネルギー政策に限らず足元が揺らいでいる。現実的な政策でバランスよく対応してほしい」と諭した。(「産経ニュース」2月23日)

 結局、蓮舫代表は党大会で工程表を示すと言いながら「2030年原発ゼロ年」を掲げることは撤回。「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向けて原発ゼロ基本法案を作成する」という言い方でごまかし、時期の明言を避けざるを得なかった。

党内外に高まる失望と不満

 党大会では、次の衆議院総選挙についても、

 政治人生のすべてをかけて政権交代を実現したい。(NHKニュース3月12日)

と、昨夏の参院選で112万票を得て当選したばかりの自身が、早々に衆議院へ鞍替えすることを示唆した。
 結党からのこの1年、民進党は「戦争法案」「年金カット法案」「残業代ゼロ法案」「共謀罪」等々、エキセントリックなネーミングで大騒ぎをしてみせるという戦術に明け暮れてきた。
 仮にも「政権交代」を謳う野党第1党が、堂々たる政策対決もできないまま、共産党もどきのそういった手法に終始していることに、党の内部でも、支持団体の連合からも、強い失望と不満が高まっている。
 多様な価値観を包摂しながら、現実的に合意形成をして政治を前に進める自公政権。冷戦時代のイデオロギー対立そのままに、いまだに〝対決〟型の政治に迷走する民進党や共産党。
 来年、民進党が第2回の党大会を開けることを願うばかりである。

「『民進党大会』から見えてきたもの」シリーズ:
「民進党大会」から見えてきたもの(上) 周回遅れの野党第1党

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