【書評】知的財産のツボをわかりやすく解説

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『知っておきたい知的財産活用術―地域が生き残るための知恵と工夫―』
香坂 玲編著
ぎょうせい
定価2100円 Amazonで購入
 
 
 
 

 インターネットの発達や、今課題のTPPなど、ビジネスの現場だけでなく、日々の生活の中でも、知的財産についての知識が必要な時代になっている。デジタルな情報が国境を越えて流通し、電子書籍が私たちの読書スタイルを変えようとしている今、知的財産に関する法律や制度を理解していないと、未来を見通すことができない。
 知的財産について、もっと勉強したいのだけれども、なんとなく難しそうで手が出なかった。そんなふうに考える多くの方にぴったりの本が出た。編著者の香坂玲さんは、現代の知的財産のあり方に深くかかわる生物多様性の専門家であり、『世界一受けたい授業』などのテレビ番組を通して、難しい問題を一般にわかりやすく説明する力量でも知られている。
 本書は、知的財産について、まさに「そこからですか!?」のわかりやすい解説を加える。たとえば、コカ・コーラは、その製法について特許を得ていない。なぜか? 身近な事例から説き起こし、特許というものが一体どのようなもので、どのようなメリットとデメリットがあるのかを、わかりやすく説明する。
 扱われているトピックは幅広く、またタイムリーである。ゆるキャラの商標問題、地域ブランドの成功事例、画期的な新薬の開発にもつながる生物資源管理のあり方、ニセモノによる被害の防止と対応。読み進むに従って自然に、知的財産についての知識、理解が深まる。
 TPPの影響を論じる最終章は、ディズニーの『ライオンキング』と手塚治虫の『ジャングル大帝』の関係から始まる。「そこからですか!?」 このやさしさで、「そこまでですか!?」の深いトピックまで扱う本書は、知的財産について知るための格好の入門書である。
(脳科学者・茂木健一郎)

<月刊誌『第三文明』2013年7月号掲載>

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